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公開日:2023-10-26

一般的な乳化剤の中には心血管疾患のリスクを高めるものがある

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EU(欧州連合)内で認可され加工食品に広く使用されている、いわゆるE-No.(E番号)付きの乳化剤の中には、心血管疾患のリスクを高めるものがあるようだ、という研究結果が『英国医学雑誌(BMJ)』に発表された。

こうした食品添加物は、何千もの超加工食品に広範に使用されていることから、今回の発見は公衆衛生上の重要な意義を有するだろう、と研究者らは主張している。

乳化剤は、外観や味、食感、賞味期限の延長などを目的として、ケーキやアイスクリーム、チョコ、パン、マーガリン、そして調理済み食品などにも使われる。種類としては、セルロース、アルギン酸、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、カラギーナン、リン酸塩、天然ゴム、ペクチンなどがある。

他のすべての食品添加物と同様に、乳化剤も科学的根拠に基づいて安全性が評価され認可されているが、最近の研究から、乳化剤が腸内細菌叢に影響を及ぼし炎症反応を促進する可能性が示唆されており、心血管系の障害に対する脆弱性を高めている可能性がある。

研究チームは、この乳化剤の影響についてさらに詳しく検討しようと、乳化剤への曝露が心血管疾患(冠動脈疾患、脳血管疾患などの心臓と脳の血流および血管が障害される病態)のリスクに及ぼす影響を評価した。

フランス人を対象とした「栄養ネット-健康(NutriNet-Sante)」疫学研究の参加者95,442名(平均年齢43歳、8割が女性)を2009年から2021年にかけて追跡調査したデータが解析された。

研究開始から2年以内に、参加者は少なくとも3回(最多21回)の食事調査(24時間思い出し法)を完了した。これは、調査日の前日24時間以内に食べた料理を思い出して記録し、そこから使われた食材や食品添加物の量を算出するものである。

参加者はまた、主要な心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)の罹患について報告を求められ、研究者らは診療記録を参照してそれを確認した。心血管疾患による死亡については、フランスの国家死亡登録簿を用いて確認された。

研究者らは、心血管疾患の発症リスクに影響を及ぼす、年齢、性別、体重(BMI)、教育歴、家族歴、喫煙の有無、身体活動レベル、食事の質(糖分、塩分、カロリー、飲酒など)といった種々の因子の影響を調整(除外)する統計処理を行った。

その結果、平均7年間の追跡調査によって、総セルロース(E460-E468の合計)摂取、セルロール(E460)摂取、カルボキシメチルセルロース(E466)摂取が、心血管疾患、とりわけ冠動脈疾患の発症リスクを高めることが明らかになった。

また、脂肪酸モノグリセリド(E471)およびジグリセリド(E472)の摂取は、すべての心血管疾患のリスクを高めた。なかでも、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド乳酸エステル(E472b)の摂取は、心血管疾患と脳血管疾患のリスクを高め、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリドクエン酸エステル(E472c)の摂取は、心血管疾患と冠動脈疾患のリスクを高めた。

リン酸三ナトリウム(E339)も冠動脈疾患のリスクを高めた。

それ以外の乳化剤については、心血管疾患のリスクとの関連はみられなかった。

本研究は、観察研究なので、乳化剤の摂取と心血管疾患の発症の間に因果関係があると証明されたわけではなく、単に関連がみられたというに留まる。また研究者らは、本研究にはそれ以外にもいくつかの制限があると述べている。たとえば、「栄養ネット-健康」研究では、高学歴で健康意識の高い女性の参加者が多いため、フランス人全体に一般化して考えるときは注意を要するとしている。

「公衆衛生当局は、問題の可能性が指摘されている食品添加物への曝露を制限する方法として、超加工食品の摂取を制限することを推奨しています」と研究者は述べている。

「これらの結果は他の大規模研究で再現性を確認する必要がありますが、消費者を保護するために、食品業界における食品添加物使用に関する規制の再評価に貢献できる可能性があります」と研究者はコメントしている。

出典は『The BMJ

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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