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公開日:2024-03-18

ビーガン食やケト食への切り替えは免疫系に迅速な影響を及ぼす

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食事の変化は極めて迅速にヒトの免疫応答に影響を及ぼすようだ、という米国NIH(国立衛生研究所)の研究結果が発表された。

研究チームは、ヒトを対象にした小規模な臨床試験において、ビーガン(厳密菜食主義)食またはケト食(ケトン食)への切り替えが、免疫系の迅速かつ特異的な変化を引き起こすことを観察した。

研究では、2週間ずつ、ビーガン食およびケト食をランダムな順番で摂取させ、その際のさまざまな生体反応が測定された。その結果、ビーガン食はヒトの自然免疫(病原体に対する身体の非特異的防御の最前線)に関連した反応を促進し、ケト食はヒトの適応免疫(感染症など日常生活での曝露やワクチン接種によって構築される病原体特異的免疫)に関連した反応を促進することが明らかになった。

代謝系の変化とマイクロバイオーム(腸内細菌叢)の変化も観察された。ただし、これらの変化が有用なのか有害なのか、また、がんや炎症疾患などの病気に及ぼす栄養介入にどのように関連してくるのかを明らかにするためには、さらなる研究が必要である。

ヒトの免疫系やマイクロバイオームに対するさまざまな食事法の影響についての科学的理解は限られている。健康を増進させるための食事法などを含めた、治療的な栄養介入は、現在のところ十分に理解されているとは言い難く、ある種のダイエット(食事法)を別の種類のダイエットと直接に比較検討した研究は少ない。

ケト食は、ケトジェニックダイエットという名称でも知られ、炭水化物の摂取を少なくし、一般的には脂肪の摂取を多くする食事法であり、血中のケトン体が増加することが知られている。ビーガン食は、一切の動物性食品を排除する厳密な菜食主義の食事法であり、食物繊維が多く脂肪の摂取が少ない傾向がある。

研究チームは、NIH臨床センターにおいて、20名の民族、人種、肥満度(BMI)、年齢の異なる参加者を対象に、2週間にわたって、ランダムに振り分けられたビーガン食かケト食のいずれかを、好きなだけ摂取してもらった。その後、さらに2週間にわたって、もう一方の食事を好きなだけ摂取してもらった。

参加者は、摂取カロリーが、約10%の脂肪と75%の炭水化物から成るビーガン食群のときに、約76%の脂肪と10%の炭水化物から成るケト食群のときよりも減少する傾向が認められた。介入期間を通じて、血液、尿、便が収集・分析された。食事法の効果は、「マルチオミクス」アプローチによって分析された。これは、生化学、細胞学、代謝学、免疫学的なさまざまな指標とマイクロバイオームの変化をすべて網羅的に分析する最新のアプローチである。参加者は、1ヶ月にわたって施設に滞在し、すべての食事が注意深くコントロールされた。

食事法の切り替えは、すべての参加者に、明らかな変化をもたらした。ビーガン食は、抗ウイルス反応を含む自然免疫系に関連する代謝経路に顕著な影響を及ぼした。一方で、ケト食は、T細胞やB細胞が関与する適応免疫に関連する代謝経路に顕著な影響を及ぼした。

ケト食は、ビーガン食に比べてより多くの血漿たんぱく質に影響を及ぼすと共に、広範な組織(血球、脳、骨髄など)のたんぱく質にも影響を及ぼした。ビーガン食は、ヘム代謝(ヘモグロビンに関係)のような赤血球に関連する代謝経路をより多く活性化したが、これはビーガン食がより多くの鉄を含んでいたためである可能性がある。

加えて、どちらの食事法も、参加者のマイクロバイオームに影響を及ぼし、先行研究で報告されていた各々の食事法に関連した細菌種の増加が観察された。

ケト食では、アミノ酸代謝の変化も観察された。アミノ酸の生産と分解に関連する人体側の代謝経路が活性化し、腸内細菌側のこれらの代謝経路が低下した。これは、ケト食にはより多くのたんぱく質が含まれていたためだと考えられる。

こうした2つの食事法が引き起こした代謝系および免疫系の変化は、参加者の多様性にもかかわらず観察されたで、食事の変化が人体において広範で相互接続された代謝系に一貫した影響を有することが明らかになった。

著者らによると、この研究結果は、免疫系が栄養介入に対して驚くほど迅速に反応することを示している。著者らは、食事の調整によって、がんや神経変性疾患に関連するプロセスを遅らせるなど、病気の予防や治療を補完できる可能性があると示唆している。

出典は『Nature Medicine

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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