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公開日:2024-02-16

ペットボトル入り飲料水には数十万個のナノプラスチック粒子が含まれる可能性

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ペットボトルの飲料水には、血中や脳細胞にまで入り込む可能性のあるナノプラスチック粒子が、従来考えられていたより一桁以上多く含まれるようだ、という米国コロンビア大学の新たな研究結果が『米国科学アカデミー論文集』に発表された。

プラスチックが環境破壊の一因となっているとの認識から脱プラスチックが謳われて久しいが、近年、マイクロプラスチックと呼ばれる微小な粒子が地球上のいたるところに偏在していることが明らかになってきた。これらの粒子は、プラスチックの分解によって生成するものであり、アレルギーなどの免疫系を含めた人体への影響や、環境汚染の原因となる可能性が指摘されている。特にペットボトル入りの飲料水には、容器あたり数万個に及ぶ粒子が含まれていることがこれまでの研究で明らかにされている。

今回、研究チームは、新たに開発された顕微鏡技術を用いて、全く新しいプラスチック世界、ナノプラスチック粒子への展望を切り開いた。これはマイクロプラスチック粒子がさらに分解されて生成する極微小の粒子であり、驚くべきことに、ペットボトル入り飲料には、1リットルあたり平均24万個ものナノプラスチック粒子が含まれていた。これは、より大きな粒子を元に算出された従来の推定値の10-100倍高い値である。

ナノプラスチックは極めて小さいため、マイクロプラスチックとは異なり、腸や肺から血液中に直接侵入することができ、そのまま心臓や脳などの器官・細胞に到達する可能性がある。さらには、胎盤を通過して胎児にまで到達する可能性もあることから、医療研究者の間では、様々な生体系における広範な影響の可能性が研究されている。

「以前は、ここは地図に載っていないただの暗黒領域でした。毒性学研究は、ただそこにあるものを推測しているだけでした。今回、これまで知られていなかった世界を覗く窓が開けたのです」と論文の責任著者であるベイジャン・ヤン博士は述べている。

世界のプラスチック生産量は年間4億トンに近づいている。年間3千万トン以上が水中または陸上に投棄されるが、化学合成されたプラスチック製品の多くは、使用中から微細粒子を環境中へ放出し続けている。完全に分解されて別の物質に生まれ変わる多くの天然有機物とは異なり、大部分のプラスチックは、どこまでも同じ化学組成のままで小さな粒子へと単純に細かくなっていくだけである。

マイクロプラスチックは、5ミリ(mm)から1ミクロン(μm)の粒子と定義され、ナノプラスチックは、1ミクロン未満の粒子である(毛髪の太さは約70ミクロン)。

ペットボトル入り飲料水に含まれるプラスチック粒子が社会問題になったのは、2018年の研究で1リットルあたり325個の粒子が発見されてからで、その後の研究でその数は何倍にも増えていった。科学者は、その数はさらに増えるだろうと予測していたが、正確な推定値は、1ミクロン以上のものに限られていた。

今回の研究では、誘導ラマン散乱顕微鏡と呼ばれる技術が使用され、米国で販売されている3種類の人気ブランド(ブランド名は明かされていない)のペットボトル入り飲料水について、100ナノメートル(0.1ミクロン)サイズまでのプラスチック粒子が分析された。

その結果、1リットルあたり11万個から37万個の粒子が含まれていることが明らかになった。その90%がナノプラスチックであり、残りはマイクロプラスチックだった。研究者らはまた、7種類のプラスチックを分別して測定した。

最も一般的なもののひとつはポリエチレンテレフタレート(PET)だった。多くのペットボトルの素材なので、これは驚きではない。PETは、ケチャップやマヨネーズの容器にも使用されている。ボトルを絞ったり加熱したりすると粒子が剥がれ落ちる可能性があるが、最近の研究では、フタを繰り返し開閉することによっても粒子が生成することが示唆されている。

だが、実際にはナイロンからでるポリアミドのほうがPETよりも多かった、とヤン博士は言う。「皮肉なことですが、それはおそらく水の瓶詰めの際にナイロンフィルターでろ過するためだと思われます。」

研究者らは他にも、さまざまな工業プロセスで使用されている一般的なプラスチックであるポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレンを発見したが、意外なことに、それらを全て足し合わせても、見つかったナノ粒子の10%にしかならなかった。

残りの9割が何なのかは全くわからないという。それらが全てナノプラスチックなのだとしたら、それは1リットルあたり数千万個にも達する可能性があるが、それ以外のほぼあらゆるものである可能性があり、一見単純な水の中の複雑な粒子構成を示しているのではないか、と研究者らは述べている。「天然の有機物が存在するのであれば、それらは慎重に区別される必要があります。」

研究者らは現在、ペットボトル入りの飲料水よりはるかに少ないとはいえ、マイクロプラスチックが含まれていることがわかっている水道水に注目しているという。これまでの計算では、洗濯物5キログラムあたり数百万個の粒子が放出されることがわかっている。

「これほど多くの粒子が見つかるのはまったく予想外のことではありません。物が小さくなればなるほど、その数は増えるということなのです」と共同研究者のシーシュアン・チェン博士はコメントしている。

出典は『Proceedings of the National Academy of Sciences

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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