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公開日:2021-02-19

食べ物の美しさに惑わされないように

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新型コロナで、ご馳走を食べる機会は激減しているが、ご馳走といえば味や香りだけでなく、華やかな見た目にも心を奪われがちだ。でもご用心。見た目が良いからといって、それがあなたの体にも良いという保証はどこにもないのだから。

消費者は、しばしば食品を見た目で区別するという失敗を犯しやすく、食品企業や広告代理店、レストランなどは、それを販売促進に利用している、と研究者らは言う。

『マーケティング雑誌』に発表された研究において、サザンカリフォルニア大学の研究チームは、社会科学と心理学を応用して、美的判断が我々の食欲と意思決定に及ぼす複雑な影響を解き明かそうと試みた。

「販売者は、食品をきれいに見せようとすることが多い」と筆頭研究者のリンダ・ハーゲン助教授は述べている。「私たちの心の中には、審美的な美しさを自然や天然物と結び付けて考える傾向があり、それが、見た目のきれいな食品を健康的な食品と錯覚させる原因になっています。そのせいで、きれいだけれど、とても体に良いとは言い難い食品に、あなたは騙されることになるのです。」

消費者は、年間7千件もの食品やレストランの広告を目にするという。1日19件である。しかもその4分の3はファストフードに関連している。広告代理店は、フードスタイリストを雇いデジタルツールを駆使して食品をこの上なく魅力にあふれたものに仕立て上げる。ハンバーガーの巧みな具材配置、チーズピザの完璧な円周、カスケードされたカラフルなナチョスなど。

ハーゲン助教授は、いかに古典的な美学が、食品の見せ方に応用され、知覚を欺いているのか、検証しようとした。シンメトリー、パターン、序列、バランスといった古典的美学の構成要素は、みな自然界を模倣したものである。クモの巣やハチの巣、ヒトデ、日没、チョウの羽、魚のウロコなどを考えてみるとよい。食品は、天然物の特徴を模倣して、いっそうきれいに見えるようになる。

神経科学における先行研究では、おいしそうな食品画像を見ることが、脳の味覚野を活性化することが示唆されている。だが、本研究においては、食品選択に審美的な美しさがもたらす、別のもう少し明白ではない影響を明らかにしようとした。それは、食品の見た目のきれいさは、食品をより健康的に見せるのか、それは消費者の選択に影響を及ぼすのか、という問題である。

研究チームは、4,300人の参加者を含む一連の実験を行い、食品の写真や実物を見せて、それが健康的に見えるか、人工的にみえるかどうかを評価してもらった。

最初の実験では、800人の参加者に対して、インターネット検索で、きれいな食品と醜い食品を探してもらった。参加者は、アイスクリームや、ラザニア、オムレツ、サンドイッチなどの画像を見つけてきた。次に、参加者に、どの食品が栄養豊富で健康的と思うかを尋ねると、全体的に男性も女性も、よりきれいにみえる食品をより健康的だとする傾向がみられた。

別の実験では、400人の参加者が、アボカド・トーストの2つの画像を見せられた。ひとつは、繊細なアボカドを丁寧に三日月形にスライスしてトーストの上にきれいに並べたもので、別のひとつは、アボカドがペースト状にトーストの上にべったり塗りつぶされたものだった。参加者は、どちらが健康的か、ナチュラルか、おいしいかを尋ねられた。

参加者は、三日月形のアボカドがきれいに盛り付けられたトーストのほうが、より健康的であり、よりナチュラルに見えると答えたが、同時に、どちらも同じくらい高価で、おいしそうだと答えた。

同様の結果は、別の800人を対象にした実験でも観察された。参加者は、カップケーキやバナナ付きアーモンドブレッド、スパゲッティマリナーラといった食品の画像を見せられた。画像は常に同じもので、きれいなものと醜いものがあるわけではなかったが、研究チームは、参加者に対して、これから見せる画像は「きれいだ」とか「醜い」と言ってから画像をみせた。参加者は、彼らの期待感に惑わされて、「醜い」食品は「きれいな」食品よりもナチュラルではなく、栄養価も低いと答える傾向がみられたという。もちろん実際にはなんの違いも存在しなかった。

さらに同様のパターンは、数年前に大学キャンパスの農場前即売スタンドで行われたフィールド実験でもみられたという。参加者の学生は、二つのピーマンのうちどちらか一つを示された。ひとつは商品としての形がパーフェクトなピーマンで、別のひとつはおよそ売り物になりそうもない歪なかたちのピーマンだった。そして、いくらなら購入するかを尋ねられた。

予想通り、パーフェクトなピーマンは、歪なピーマンに比べて平均56%高い価格がつけられた。明らかに、パーフェクトなピーマンのほうが健康的と考えられたためだろう、と研究チームはみている。

「繰り返し、いくつもの実験において、人々が同じ食品を、ただ見た目がきれいだというだけで、よりナチュラルであり、それゆえに健康的なものだと信じるのをみてきました」とハーゲン助教授は言う。「消費者は、食品が古典美学的に美しいものだと判断すると、より栄養価が高く、無駄な脂肪は入っておらず、低カロリーだと思い込むのです。このバイアス(偏見)が、消費者の選択と嗜好に影響を及ぼすのです。」

スーパーやコンビニに行けばそれは一目瞭然だという。人々はナチュラルなものを好む。オーガニックや天然ハーブ、家庭菜園などは、合成化合物に満ちた加工食品のように不自然なものにくらべて、より健康的であると信じられている。

だが、それゆえに、きれいな食品を使った広告は、容易に消費者を欺いて不健康な選択へと導く可能性も高い。研究チームは、広告の食品画像に健康的な装いを促進する改変を施したことを明記することを法律で義務付けるべきだ、と主張している。

「広告やレストランのメニューで多くの食品が実際以上に健康的であるかのように外見を装われています」とハーゲンは言う。「人々を誤解させるような美学の使用は、政策立案者による綿密な検討を必要とします。食品画像の見た目がきれいに修正されていることを明記することは、実験では有効性がみられたので、消費者を保護する効果的な方法として期待できるでしょう。」

出典は『マーケティング雑誌

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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