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公開日:2023-07-24

食事ガイドラインは腸内細菌叢を改善して健康を促進する

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食事ガイドラインにかなった食事をする人は、健康的で多様性が高い腸内細菌叢をもっているようだ、という米国イリノイ大学の研究結果が発表された。

腸内細菌叢は、我々の消化管内に棲息する100兆個もの微生物で構成されており、多くの代謝プロセスに関与している。腸内細菌叢の多様性を維持することは、深刻な病気につながる体内の不具合を修復し回復の手助けになると考えられている。

だが、どのような食事が「健康的な腸内細菌叢」を作り出すかは、かならずしも明確ではない。そこで研究チームは、『米国人の食事ガイドライン』に適合する食事が、人々の腸内細菌叢に及ぼす影響について検討した。

『米国人の食事ガイドライン』は米国政府が推奨する食事ガイドであり、定期的に改定されているが、これまでの改定においては、腸内細菌叢は考慮されておらず、その影響は不明だった。

「私たちの食事が腸内細菌にどう影響するかを理解することは、今後の食事ガイドラインをより良いものにしていくうえでも極めて重要です」と筆頭研究者のアレクシス・バルデオン博士候補生は述べている。

研究チームは、数千人分の糞便サンプルから腸内細菌叢を解析・登録した大規模データベースである『米国人の腸プロジェクト』から健康な者432名を選び出した。そして彼らの食事を『米国人の食事ガイドライン』に基づく「健康的な食事インデックス」を用いて採点した。得点の高い順に3つのグループ(高中低)に分類して、腸内細菌叢との関係を解析した。

その結果、「健康的な食事インデックス」が最も高いグループ(食事ガイドラインに最もかなった食生活)が、最も多様性の高い腸内細菌叢を保持しており、しかも食物繊維の代謝といったヒトに有用な機能をもつ腸内細菌が最も豊富だったことが明らかになった。

「食物繊維を分解してくれる腸内細菌は本当に有用かつ重要です。というのは、人間は食物繊維を消化することができないからです。食事の質が高い参加者ほど、食物繊維を分解する細菌を豊富に保持していました」とバルデオン氏は述べている。

研究チームは、この研究結果が現在の食事ガイドラインを支持するものだと述べている。果物、野菜、食物繊維を豊富に含む食事ガイドラインに従うことは、腸内細菌を多様で健康的なものにすることを含めて、健康への最善の食事戦略といえそうである。

けれども、研究チームではさらに、今回の研究結果なども踏まえて、腸内細菌叢を考慮にいれた新しい食事ガイドラインが作られることを願っているという。

「歴史的にみて、食事ガイドラインや栄養所要量は、これまで腸内細菌のことを考慮して作られたことはありませんでした。でも、今後それは変わっていくでしょう」と共同研究者のハンナ・ホルシャー准教授は述べている。

「現在のところ、腸内細菌叢の組成は健康診断の標準的な検査項目には含まれていません。そもそも、腸内細菌を検査しても、医師がそれを評価できるほどの科学的根拠はまだ存在しないのです。でも、私たちが、食事と腸内細菌叢と健康の関係をさらに理解することで、いずれ食事ガイドラインも腸内細菌叢をそのターゲットのひとつに加えるようになるでしょう。」

腸内細菌叢の重要性は次第に認識され始めており、実際、最新の食事ガイドラインの元になった科学報告書では、食事と細菌叢に関する研究からの証拠が将来の食事の推奨事項で考慮されるべきであると初めて認めた。

「現在の食事ガイドラインが、血圧やコレステロール値を下げるために塩分や飽和脂肪の摂取を控えるように作られているように、私たちの目標は、有益な腸内細菌叢を作り出すための食事ガイドラインを作り出すことです」とホルシャー准教授はコメントしている。

出典は『栄養学雑誌

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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