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公開日:2014-08-18

健康に長生きするための新たな戦略

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増え続ける生活習慣病に対処するためには、それらの共通の原因である加齢に伴う代謝経路の障害を予防・修復するようなアプローチが必要ではないか、という米国ワシントン大学の研究者らによる論説が、科学誌『ネイチャー』に発表された。

1408328913 「薬による症状の改善に焦点を当てた現在のやり方では、人々の寿命を延ばすことはできますが、その代わり複数の病気を抱えた患者を大量に作り出すことになり、莫大な医療費が必要になります」と筆頭著者のルイジ・フォンタナ教授は語っている。

教授らが提案するのは、薬物による対症療法ではなく、生活習慣病が加齢とともに増加する点に着目した新しいアプローチ法である。それは、健康的な食事と定期的な運動はもちろんのこと、それに加えて代謝を遅くし、加齢の分子レベルの原因を取り除くことで、細胞に長期にわたって蓄積していく障害(これがすなわち老化ということだが)を減らし、健康な長寿を実現しようというものである。

教授らによれば、加齢に伴う病気、たとえば心不全、糖尿病、関節炎、がん、認知症などは、単独で罹ることは少ないという。65歳以上の7割以上の人が、2つ以上の慢性疾患を同時に抱えている。これらの病気が身体のどこかで互いに関連し合っていることは、様々な臨床研究や動物実験において、どれか一つの病気に対する介入が、しばしば他の病気の改善をもたらすことからも明らかであるという。

「心不全は、あるとき急に発生するわけではありません」とフォンタナ教授は説明している。「それには30-40年という長い年月にわたる不健康な生活習慣で、高血圧や高コレステロール血症を招くような分子レベルの異常が蓄積し、それが60代のあるとき心不全となって現れるのです。」それゆえ、健康的な食事や定期的な運動などによって、加齢による分子レベルの異常を抑えることが、心不全を予防する第一歩となるというわけである。

フォンタナ教授自身は、食事制限が健康寿命を延ばす効果についての研究を行ってきた。そして、摂取カロリーを極端に制限しても、他の栄養素がきちんと満たされていれば、心臓は若い時の柔軟性をずっと保てることを教授は発見した。それだけでなく、カロリー制限は、血圧や体内の炎症反応を低く抑える効果を持ち、筋肉を若々しい状態に維持することが可能だったという。

教授らはまた、寿命を延ばすことに関係している複数の代謝経路が、抗がん剤や免疫抑制剤、抗糖尿病薬などによって影響を受けることを指摘している。それ以外にも、天然、合成を問わずきわめて多くの化合物が加齢と生活習慣病に関係する代謝経路に影響を及ぼす。健康な食事とカロリー制限も同様にそれらに影響して、動物によっては寿命を50%も延長することすら可能である。

ところが、従来、ほとんどの臨床医は、加齢の分子メカニズムがどこまで解明され、それが生活習慣病とどのようにリンクしているかを知らず、科学者たちは薬物が加齢の代謝経路にどう影響するか理解していなかったため、それらを統合的に研究する方向性が打ち出されることは困難な状況にあった、と教授らはいう。

教授らは、今こそ動物実験の成果を臨床に応用するための方法論を確立すべきときだと提言している。明確な方法論に基づいて加齢を遅くする動物実験の結果を人間に応用するための臨床試験を実施することを求めている。人間と動物の老化の代謝経路には共通点が多いので、実現可能性についてはかなり楽観的だということだ。

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「恐らく最大の問題は人間と動物の違いではありません」と教授は言う。「もっとも困難なことは、研究費がそれらの研究に割かれるように人々の意識を向ける必要があることなのです。」

教授らによれば、現在の医学研究では病気を治すことを目的とするものでなければ予算を獲ることは難しい。健康を促進するような研究にはほとんど予算がつかないのが現状であるという。「現状のままでは、高齢化が進んで患者がますます増え、一部の大金持ちしか満足な医療を受けられなくなってしまうでしょう。」

出典は『ネイチャー』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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