公開日:2020-10-27
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幼若期にビタミンDが欠乏すると、エネルギー(カロリー)が成長のために使われないだけでなく、それを脂肪に変換して貯め込むという代謝異常が起こるようだ。米国ノースカロライナ州立大学が『サイエンティフィックレポート』誌に発表した。
この結果は、ビタミンDが代謝の恒常性に影響を及ぼすことを示唆するものとして重要であるという。
セス・クルマン教授が率いる研究チームは、幼若期のゼブラフィッシュを3群に分け、各々に(1)ビタミンDを含まない食事(欠乏群)、(2)ビタミンDを十分に含む食事(強化群)、(3)通常食(対照群)を与えて4カ月にわたって飼育した。その後、その発育状況(身長体重など)、骨密度、血中の中性脂肪、その他の脂質、コレステロール、そしてビタミンDレベルを測定した。研究チームはまた、脂質生産、貯蔵、代謝そして成長促進に関与するカギとなる代謝経路について詳しく解析した。 |
実験の結果、ビタミンD欠乏群(1)のゼブラフィッシュは、ほかの2群(2、3)と比較して、身体の大きさが平均して50%小さく、けれども顕著に多くの脂肪蓄積がみられたという。つまり、発育不全にもかかわらず肥満傾向があったということである。
「ビタミンD欠乏ゼブラフィッシュは、肥大と過形成、すなわち脂肪細胞のサイズと数が共に増加する傾向を示していました」とクルマン教授は語っている。「さらに、中性脂肪値とコレステロール値が高かったのです。これは心臓代謝疾患につながる代謝系のアンバランスを示すものです。発育不全を併せて考えると、どうやらビタミンDには、エネルギーを脂肪の貯蔵ではなくて成長に使わせる、という重要な役割があるようです。」
次に研究チームは、この実験において、ビタミンD欠乏食で発育不全に陥ったゼブラフィッシュを対象に、今度は十分なビタミンDを与えて、さらに6か月、飼育した。ビタミンDがあれば発育が正常化されるのかどうかを調べるためである。
その結果、小さいが脂肪の蓄積がみられたゼブラフィッシュは、ビタミンDを十分に与えられることで、成長しはじめ、さらに蓄積した脂肪も徐々に減少していった。とはいうものの、完全に他の正常なゼブラフィッシュの大きさまで成長することはなく、脂肪蓄積も完全には解消されなかったという。 「本研究が示しているのは、ビタミンD欠乏には、正常な発育と脂肪蓄積の間のバランスを破壊し健康な代謝を損なう可能性がある、ということです」とクルマン教授は言う。 「本来であれば発育に向けられるはずのエネルギーの一部が、脂肪を作る経路に振り分けられてしまうのです。いちど起こると完全に元には戻せません。私たちはまだそのメカニズムについて完全に理解しているわけではありませんが、少しずつそれを明らかにし始めたところなのです。」 |
今後の研究の方向性として、ビタミンD欠乏によるエピジェネティック(遺伝子の化学的な修飾による変化)な効果が影響しているかどうかを、ビタミンD欠乏の母親から生まれた子供について調べることで明らかにしていきたい、と教授はコメントしている。
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