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公開日:2019-02-27

ビタミンDが、生命時計のタイミングを調節する

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米国ポートランド州立大学の研究チームは、ビタミンDが、ある種の魚において胚発生の引き金になっていることを発見した。これはビタミンが脊椎動物の初期発生に重要な役割をもつ、という新たなエビデンス(証拠)であるという。

一年生メダカの一種であるアウストロフンデュルス・リムナエウスは、降雨によって形成され蒸発して消える運命にある季節性の池の中で全生涯を送る。このような過酷な環境下で生き延びるために、このメダカは、2つの異なる状況下で異なる反応を示す胚を生み出すように進化した。通常の条件下では胚はそのまま成長して成熟するが、過酷な条件下では、胚は全ての発達を止めて休眠状態に入る。そうすることで、水や酸素がない渇いた土壌中でも数か月生き延びることが可能になるのである。

研究チームは、このメダカの胚の休眠がどのように調節されているのかを知りたいと考えた。特に、休眠すべきか否かを、胚はどうやって知るのだろうか? それを明らかにするために、研究チームは、様々な環境条件の変化の中に胚をおいて観察を重ねた。胚発生の段階ごとのRNAを抽出して分析し、段階ごとの遺伝子発現の変化から、なにが引き金になっているのかを知ろうとした。

その結果明らかになったのは、予想もしなかったものだった。分析結果が示したのは、ビタミンDが合成され信号分子として働くことで、正常な胚発生が起こるということだったのである。ビタミンDの信号経路を阻害してしまうと、通常の胚発生が起こる環境下でも、それが起こらなくなった。

研究チームは、同じことをゼブラフィッシュで実験してみた。すると、ゼブラフィッシュには、休眠のようなメカニズムは存在しないにもかかわらず、やはりビタミンDの信号経路が阻害されると、通常の胚発生が止まってしまったという。ビタミンDは脊椎動物の胚発生に必須のビタミンだったのである。

さらに、線虫やショウジョウバエにも、このメカニズムで使われているのとよく似たビタミンD受容体が存在することが明らかになった。つまりこのビタミンDの働きに関与する受容体は、長い進化の過程を経て保存されてきた重要なものであるらしい。

「これは、ビタミンDの新たに発見された役割です」と筆頭研究者のアミー・ロムニー博士は語っている。「私たちが見つけたのは、ビタミンDが、単にカルシウムの代謝を制御するだけのものではなく、もしかしたら生命の存在そのものにとって極めて重要な役割を果たしているかもしれない、ということです。これは生命時計の秘密を解き明かす重要な手がかりになるかもしれません。」

主任研究者のジェイソン・ポドラブスキー教授によれば、今回の研究チームの発見は、休眠とそれをコントロールするメカニズムについてのより進んだ理解をもたらす可能性をもっており、それはまたヒトの健康にも寄与することができるだろう、という。休眠のような極端な生理条件を制御するためのシステムを理解することで、寒冷ショックや心臓マヒなどの同様に極端な生理条件を制御するための手掛かりが得られるかもしれないからである。

さらに、休眠をしない別の種類の魚にそれを起こせたということは、ヒトを含めた他の生物にそれを応用できる技術が開発される可能性もあるということであり、極めて興味深いことだ、と教授はコメントしている。

出典は『国立科学アカデミー論文集』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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