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公開日:2019-12-12

高齢者の筋肉機能低下はビタミンDが足りないから?

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高齢者にみられる筋肉機能の低下には、ビタミンD欠乏が関係しているようだ、という研究結果が『加齢臨床研究』誌に発表された。

筋肉の機能維持は、高齢者の健康のかなめであり、独立した生活を営み、生活の質(QOL)を維持するうえで欠かせない。最近注目されているフレイル(虚弱)も筋肉の衰えが重要なポイントになっている。

重量挙げのようなレジスタンストレーニングが筋肉機能の維持に有効だが、ビタミンDもまた筋肉に保護的に働いていることは意外に知られていない。

今回アイルランド・トリニティカレッジの研究チームは、英国加齢縦断研究(ELSA)の参加者で60歳以上の4,157名のデータを解析した。対象者の筋肉機能は、握力とSPPB(簡易身体性能調査票:バランステスト、歩行テスト、椅子立ち上がりテストからなる)によって評価した。血清ビタミンD状態は、25-ヒドロキシビタミンD(25OHD)を測定し、30 nmol/L未満を欠乏とした。これは一般に骨関連疾患のときに欠乏の目安として使われる値である。

データ解析の結果、以下のようなことが明らかになった。

  • ●ビタミンD欠乏の高齢者で筋力低下の者の割合は40.4%であり、ビタミンD欠乏でない者の21.6%のほぼ2倍であった。
  • ●同様に、筋肉パフォーマンス障害のある者の割合は、ビタミンD欠乏者で25.2%であり、欠乏でない者の7.9%のほぼ3倍であった。
  • ●これらの結果を統計的に処理した結果、ビタミンD欠乏が筋力低下と筋肉パフォーマンス障害を有意に高めていることが明らかになった。
  • ●研究ではまた、運動が有効な予防手段であることも明らかになった。定期的に中強度以上の運動をしている者は、していない者に比べて、筋力低下と筋肉パフォーマンス障害の割合が有意に少なかった。

 

以上のように、ビタミンD欠乏は、明らかに高齢者集団において筋力低下と筋肉パフォーマンス障害に関連していた。

ビタミンD欠乏を解消すれば、骨関連疾患を予防できることが知られているので、骨格筋機能においてもビタミンDの補給が有効である可能性はあるだろう、と研究者らは述べている。

「私たちの結果が示唆しているのは、ビタミンD欠乏によって高齢者の筋肉機能の低下が早まること、そして運動がそれを抑えるのに有効であることです。筋肉機能の維持は、健康に年を重ねていくうえできわめて重要ですが、見過ごされがちです。運動をすること、ビタミンDを補給すること、他にも食事や生活習慣などまだ不明な点も多くありますが、そうしたさまざまな方向からの複合的なアプローチが必要と思われます」と主任研究者のマリア・オサリバン准教授は語っている。

本研究の筆頭著者であるニーアム・アスペル博士は「私たちの研究は、高齢者のビタミンD欠乏を減らすのが好ましい、という現在の公衆衛生政策に合致するエビデンスを提供しています。けれども、本当にビタミンDを補給すれば筋肉機能が改善されるかどうかは、さらなる研究が必要です」とコメントしている。

共同研究者のアーモン・リアード博士は「ビタミンD欠乏と運動はどちらも変更可能な因子です。国によっては、たとえばフィンランドでは、ビタミンD添加食品政策が成功裏に実施されています。そのような政策は英国やアイルランドでも実施可能でしょう」とコメントしている。

出典は『加齢臨床研究』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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