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公開日:2023-03-13

ストレス解消のはずのランニングで運動依存に

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ネガティブな経験を忘れるためにランニングする人は、前向きな人に比べて、運動依存になる傾向が高めであるようだ、という研究結果が発表された。

ランニングには多くの身体的および精神的メリットがあるが、中には運動依存を起こす人もいる。これは、身体活動に過度に依存して健康上の問題をおこすような状態のことであり、驚くべきことに、趣味的なランナーにもしばしばみられる現象だという。

研究者らは、『心理学の最前線』誌に発表された研究で、ランニングと運動依存の関係を理解する上で「現実逃避」の概念が助けになるだろう述べている。

「現実逃避はありふれた現象ですが、その動機的な裏付けと、それが経験や精神面に及ぼす影響についてはほとんど知られていません」と筆頭著者でノルウェー科学技術大学のフローデ・ステンセン博士は述べている。

「現実逃避は、つまらない浮世のしがらみを忘れさせてくれる一時の気晴らしである、としばしば定義されます。つまり、我々の日々の活動の多くは、現実逃避の一種と言えなくもありません」とステンセン博士は言う。「現実逃避によって、我々の心は自我を和らげ、くよくよしなくなり、思考や感情からくるストレスやプレッシャーから解放されます。」

現実逃避によって、物事の見方をリセットすることもできるし、取り組むべき問題から気をそらすこともできる。ポジティブな経験を探求する適応的な現実逃避は、自己拡張と呼ばれ、ネガティブな経験を回避するための不適応的な現実逃避は、自己抑圧と呼ばれる。実際のところ、ランニングは、探求行動でもあり回避行動でもある。

「現実逃避のこれら二つの形態は、ポジティブな気分を促進することとネガティブな気分を抑制しようとする二つの異なる心の有り様から生じてくるものです」とステンセン博士は述べている。

自己拡張のために現実逃避する者には、よりポジティブな効果があるだけでなく長期的な利益もある。だが、それとは対照的に、自己抑圧のために現実逃避する者は、ネガティブな感情だけでなくポジティブな感情も抑制し、回避につながる傾向が高い。

研究チームは、様々なランニング経験を有する趣味的ランナー227名(半数が女性)を対象に、現実逃避と運動依存の三つの異なる側面を調べるアンケート調査を実施した。

調査の結果、研究チームは、現実逃避が自己拡張的であるランナーと自己抑圧的であるランナーが、きれいに二分されることを発見した。自己拡張は、ウェルビーイング(幸福)と正の相関があり、自己抑圧は、負の相関があった。自己拡張も自己抑圧もどちらも運動依存に関連していたが、自己抑圧の方により強い関連がみられた。現実逃避のタイプは、年齢、性別、ランニング経験とは関連していなかったが、ウェルビーイングと運動依存に関連していたという。運動依存と判定されるか否かにかかわらず、自己拡張的なランナーの多くは、自分のウェルビーイングに対して、よりポジティブな意識をもっていた。

運動依存は、運動から得られる潜在的なウェルビーイングを損なうが、それは、運動依存の原因でもあり結果でもあるようだ。つまり、ウェルビーイングが低下することで運動依存に拍車がかかり、それがまたウェルビーイングを低下させるのである。

同様に、ポジティブな自己拡張を経験することも、運動依存を促進する心理的動機である可能性があるという。

「現実逃避における動機付けのダイナミクスと結果をさらに解明するには、縦断的な研究デザインを使用したより多くの研究が必要です」とステンセン博士は述べている。「けれども、今回の発見は、人々が自分自身の動機を理解する助けになり、治療に役立つ可能性があります。」

出典は『心理学の最前線

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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