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公開日:2023-05-17

ChatGPTは肝がん患者(と医師)を助ける

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対話型AI(人工知能)であるChatGPT(チャットジーピーティ)は、肝硬変や肝がんに苦しむ患者にとって、有用なツールになるかもしれない、という米国シダーズサイナイ病院の研究結果が『臨床分子肝臓学』誌に発表された。

ChatGPTは、病気の基礎知識や患者の日常生活上の注意点、治療法などに関する情報を一般の人にも理解し易い形で提供してくれるので、医師にとっても便利なツールになるという。

「肝硬変や肝がんの患者とその介助者は、しばしば病気の管理や合併症の予防に関する知識の不足に悩まされます」と主任研究者のブレナン・シュピーゲル医師は述べている。「私たちは、ChatGPTが、もちろん限界はありますが、患者を鼓舞して健康リテラシーを向上させる助けになり得ることを確認しました。」

肝がんや肝硬変(重篤な肝臓疾患で肝がんになるリスクも高い)と診断された患者は、しばしば複雑で管理することが難しい追加の治療が必要になる。

「治療が極めて複雑になることから、患者には、最適な結果が得られるように、病気の知識を学んでもらう必要があります」と共同研究者のアレクサンダー・クオ医師は述べている。「ところが、現在ウェブで利用できる患者とその介助者のためのリソースは、しばしば長文で彼らには読解が困難なものが多いため、それが治療の妨げにもなってきました。」

このような場合、患者のリテラシーを高めるために、患者ごとに個別化された教育AIモデルがあれば大いに助けになることが期待される。

そうしたAIモデルのひとつとして最近特に注目されているのがChatGPTである。チャット形式で、普通の言葉での対話が可能であることから、またたくまに普及した。ユーザーがプロンプトに好きな言葉で質問を打ち込めば、AIがデータベースからの情報をまとめて、わかりやすい言葉で答えてくれる。日本でのやり取りも普通に可能であるし翻訳もしてくれる。

ChatGPTは、すでに医療の専門家の間でも論文作成などに活用されており、医師国家試験などの高度に専門的な内容でもかなりの正確性をもって回答することができることが明らかにされている。

「ChatGPTは、専門的なことにも理解し易い回答を返してくれることがわかっています」と筆頭著者のイェ・フィ・イェオ医師は述べている。「けれども、この研究では、それをさらに進めて、ChatGPTが臨床現場で、特定の病気に関する質問に、医師に比べてどれくらい正確に回答できるかを初めて調べました。」

研究チームは、肝硬変と肝がんについて、ChatGPTの答える知識の信頼性を検証するために、患者から頻繁に聞かれる164件の質問を5つのカテゴリ(基礎知識、診断、治療、日常生活、予防医学)に分けて実際に質問していき、その回答の信頼性について2人の判定者(肝臓移植専門医)が判定した。ChatGPTの回答は毎回異なる可能性があるので質問はひとつにつき2回繰り返してその両方の回答を判定した。

検証の結果、ChatGPTは、質問の約77%に正確に回答することが明らかになった。さまざまなカテゴリの91件の質問にきわめて正確に答えることができたという。

だが、判定者によれば、基礎知識、治療、日常生活に関する回答の75%は、包括的または正確なものではあったが、不十分であった。

さらに、回答のうち、基礎知識の22%、診断の33%、治療の25%、日常生活の18%、予防医学の50%に、「正確なデータと不正確なデータが混在した」回答がみられたという。

ChatGPTはまた、新たに病気と診断された患者が次にすべきことに関して、実践的かつ有用なアドバイスを患者と介助者に提供した。

とはいうものの、全体的に見て、本研究では医師からのアドバイスがAIよりも優れていることに疑いの余地はなかったという。

「依然としてさらに多くの研究が、より良い患者教育のツールの検証のために必要とされると思われますが、それでも私たちはChatGPTが、医師にとって極めて有用な補助ツールになることを信じて疑いません。医師の代わりではなく、あくまでも補助ツールとしてですが、ChatGPTは多くに人に分かりやすく正確な情報を提供することができるでしょう」とシュピーゲル医師は述べている。

「私たちは、肝硬変や肝がんの患者を鼓舞し健康リテラシーを高め、困難な状況に立ち向かわせようとする医師にとって、このツールが大いに助けになるだろうと期待しています。」

出典は『臨床分子肝臓学

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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