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公開日:2019-12-03

60過ぎでも運動するようになれば心臓病、脳卒中のリスクが下がる

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還暦を過ぎてからでも、運動する習慣が身に付けば心臓病と脳卒中を予防できそうだ、という110万人以上の高齢者を対象とした研究結果が『欧州心臓ジャーナル』誌に発表された。

韓国ソウル大学校のキム・キュウォンら研究チームは、それまで運動していた者が高齢になって運動しなくなった場合、心血管疾患の発症リスクが27%高まることを発見した。だが逆に、運動しなかった者が高齢になって運動するようになると、心血管疾患の発症リスクは11%低下したという。

高齢者におけるこの運動量と心血管疾患リスクの関係は、身体に障害のある者や高血圧症、脂質異常症、糖尿病患者などでもみられた。

今回研究チームは、国民の97%が加入している韓国国民健康保険サービスに登録された60歳以上の男女約112万人のデータを解析した。対象者は、2009年と2011年の2回、健康チェックを受け、運動などの生活習慣についてアンケートに回答した。

研究チームは、特に2回のチェックの間におきた運動量の変化(ただし運動は、中程度から高強度の運動に限定)に着目し、対象者の2013年1月から2016年12月までの心臓病、脳卒中など心血管疾患の病歴データとの関連を解析した。

データは、統計処理によって対象者の種々の社会経済的因子(年齢、性別、服薬、喫煙、飲酒など)の影響を除き、運動量の変化と疾患の関係だけが抽出されるように調整された。

対象者の平均年齢は67歳で約半数が男性だった。全体の約6割の者が2回のチェックの両方で運動はしないと回答した。1回目に運動しなかった者の22%が、2回目の時は運動していると回答した。1回目に週5日以上運動していた者の54%が、2回目の時には運動しなくなっていた。追跡期間中にのべ114,856人が心血管疾患(心臓病または脳卒中)を発症した。

データ解析の結果、研究チームは、1回目に運動していなかったが、2回目には週3-4回以上の中-高強度運動をするようになっていた者は、運動しないままだった者に比べて、心血管疾患のリスクが11%低下したことを発見した。1回目に週1-2日の中-高強度運動をしていたが、2回目には週5日以上に増えていた者も、リスクが10%低下したという。

対照的に、1回目のチェック時に、週5日以上の中-高強度運動をしていたが、2回目の時に運動しなくなっていた者は、心血管疾患のリスクが27%上昇した。

身体に障害のある者や慢性疾患の者だけに限っても、運動しなかったがその後週3-4日の中-高強度運動をするようになった場合には、心血管疾患のリスクが低下した。身体障害者では16%の低下、糖尿病や高血圧、高コレステロール血症など慢性疾患の者では4-7%の低下がみられた。

主任研究者のキム氏は次のように語っている。

「大切なことは、年をとっても運動の頻度を減らさず、むしろ増やすほうが心血管疾患の予防になるということです。2050年には60歳以上の世界人口が20億を超えると言われており、現時点でも9億人に達していることから、重要な社会的意義をもつ知見といえると思います。年齢のせいで定期的な運動には困難を感じるとしても、心血管系の健康にはより多くの運動が必要であり、それは障害や慢性疾患のある人にも言えるのです。

地域ぐるみの運動奨励プログラムを政府は率先して作るべきだと思います。臨床的な観点から、医師は運動を処方して治療の一部に取り入れるべきでしょう。」

本研究は、韓国人が対象であるため、民族性や生活習慣の違う集団に当てはまるとは断言できないこと、運動については自己申告によっており、また家事などの身体活動の情報がきちんと考慮されていないなどの限界があるという。また人々がなぜ運動レベルを変更したのかは、今回の調査ではまったく不明である。

出典は『欧州心臓ジャーナル』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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