公開日:2019-01-07
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わずか1回の運動(ランニング60分)によって、代謝に影響を及ぼすニューロンが活性化され、それが最大2日間は継続するようだ、という研究結果を米国テキサス大学南西部医療センターの研究チームが発表した。これはフィットネスにおける脳の潜在的な役割を示唆するものとして興味深い結果であるという。
「これらのニューロンを活性化するのにそれほど多くの運動はいらないということです」と主任研究者のケビン・ウィリアムス博士は語っている。「私たちの結果によると、中強度の運動を1回すれば、数日続く大きな利益が、特にグルコース代謝において得られるのです。」
研究チームは、マウスを用いて、短期および長期の運動が、視床下部のメラノコルチン系を構成する2つのタイプのニューロンに及ぼす効果を測定した。このニューロンはヒトとマウスに共通にみられるもので、ひとつはPOMCと呼ばれ、活性化すると食欲を低下させ、血糖値を下げ、カロリーの燃焼を高める。別のひとつはNPY/AgRPと呼ばれ、活性化すると食欲を高めて代謝を低下させる。 |
実験の結果、1回の運動(20分ずつ3回のランニング)で、2日間にわたって、POMCニューロンが活性化され、NPY/AgRPニューロンが阻害されることがわかった。実際に食欲が最大6時間にわたって抑制されたという。
「この結果は、多くの人が運動した直後には空腹感をさほど覚えない理由を中枢神経レベルで説明するものでしょう」とウィリアムス博士は語っている。
さらに、より長時間の運動の効果が、POMCニューロンで観察された。このニューロンが活性化されるとグルコース代謝が改善する。レプチン受容体と呼ばれるたんぱく質が発現している場合にも、活性はより長時間持続したという。
先行研究において、メラノコルチン系は摂食および絶食によって変化することが報告されていたが、運動との関係は示されていなかった。 今回の結果は科学的な理解を深めるだけでなく、糖尿病などの患者におけるグルコース代謝の改善のための新たな治療法を探索する上で、従来とは異なる手段の可能性を示唆するものでもあるという。糖尿病は、我が国でも予備群も含めると1,400万人と人口の1割を大きく超えており、世界中で早急な解決が待たれる公衆衛生上の重要課題である。 「メラノコルチン系ニューロンを活性化することは、特に血糖値の制御を改善する必要のある糖尿病患者の治療には有益だと思われます」とウィリアムス博士は語っている。 |
研究チームでは、メラノコルチン系ニューロンが運動で活性化されるメカニズムを明らかにする次の研究を計画中である。
「この研究は単にフィットネスを改善させるためだけのものではありません」とウィリアムス博士は語っている。「運動と神経ネットワークの関係についての理解を深めることは、グルコース代謝をより良く制御するための可能性を秘めているのです。」
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