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公開日:2023-02-21

魚のオメガ3脂肪酸が慢性腎臓病のリスクを下げる

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魚介類に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸は、慢性腎臓病の発症リスクをわずかに下げ、腎臓機能の低下を遅らせるようだ、という豪州ニューサウスウェールズ大学の研究結果が『英国医学雑誌(BMJ)』に発表された。

植物に含まれるオメガ3脂肪酸にはこのような効果は見られなかったという。

その効果は、強いものではなかったが、魚介類の十分な摂取を推奨している現在の臨床ガイドラインを支持する結果であった、と研究者らは述べている。

慢性腎臓病は、世界中で約7億人の人々に影響を及ぼし、腎不全や最悪の場合は死に至るため、病気の発症や進行を抑える方法が強く求められている病気である。

動物実験では、オメガ3脂肪酸(正確にはオメガ-3系多価不飽和脂肪酸、略してn-3PUFA)が腎臓機能に有益な効果を示すことが示唆されているが、ヒトに対する効果の報告は限定的だ。これは、おそらく現在までの食事調査の方法に問題があった、と研究者らは言う。

そこで、研究チームは今回、オメガ3脂肪酸の摂取量を血液中のバイオマーカーから推定した先行研究のデータを用いて、オメガ3脂肪酸と慢性腎臓病の関係を分析した。ヒトの体内ではオメガ3脂肪酸はほとんど作られないので、血液中のバイオマーカーは、摂取した食品を反映するからである。

バイオマーカーには、エイコサペンタエン酸 (EPA)、ドコサヘキサエン酸 (DHA)、ドコサペンタエン酸 (DPA)、およびアルファリノレン酸 (ALA) が含まれていた。すべてオメガ3脂肪酸であるが、EPA、DHA、DPA の主な供給源が魚介類であるのに対し、ALA は主に植物 (ナッツ、種子、葉物野菜) に含まれるという違いがある。

慢性腎臓病は、腎臓機能を表わす推算糸球体濾過量(eGFR)が60未満(正常値は90-120)であることと定義した。

分析には、2020年5月までに発表された19件の先行研究から、25,570人のデータが使用された。参加者の年齢は49-77歳で、平均eGFRは76.1-99.8だった。参加者は主として白人男女だった。平均11年間の追跡調査期間中に4,944人(19%)が慢性腎臓病の診断を受けた。

年齢、性別、人種、BMI、喫煙の有無、飲酒の有無、身体活動の有無、心臓病、糖尿病など影響を及ぼす種々の因子を統計処理によって調整した結果、血中の魚介類由来のオメガ3脂肪酸が高い人は、高くない人に比べて、慢性腎臓病の発症リスクがわずか(8%)に低いことが明らかになった。

オメガ3脂肪酸の摂取量が最も多かった上位5分の1の人だけを、最も少なかった下位5分の1の人に比べると、慢性腎臓病の発症リスクは13%低かった。オメガ3脂肪酸のなかでも、とりわけDHAの摂取の多いことが、eGFRの低下が遅いことと関連していた。

植物由来のオメガ3脂肪酸であるALAは、慢性腎臓病の発症と関連が見られなかった。

今回使用した先行研究はすべて観察研究であり、研究ごとのデザインと方法の違いが結果に影響を及ぼしている可能性があることを研究チームは指摘している。

とはいうものの、さらなる分析においても一貫して効果が実証されていることから信頼性は高いだろう、と研究チームは述べている。

「私たちの分析の結果は、魚介類のオメガ3脂肪酸の摂取と慢性腎臓病の発症リスクのあいだにある因果関係を証明するものではありませんが、健康的な食事パターンの一部として魚介類を十分に摂取することを推奨している現在の臨床ガイドラインを支持するものです」と研究チームは述べている。

「慢性腎臓病の予防と管理における魚介類のオメガ3脂肪酸の潜在的な有効性を評価するためには、今後ランダム化プラセボ(偽薬)対照臨床試験が必要です」と研究チームは附言している。

出典は『英国医学雑誌(BMJ)

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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