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公開日:2022-03-18

若い頃からの複数の慢性疾患は認知症のリスク

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「多疾患罹患」として知られる複数の慢性疾患を抱えている人は、歳をとってから認知症を発症するリスクが高まるかもしれない、という大規模調査の結果が『英国医学雑誌(BMJ)』に発表された。

高血圧、糖尿病、冠動脈性心疾患、うつ病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった慢性疾患に、すでに50代半ばで複数罹患していると、より高齢での罹患に比べて、後年の認知症リスクがはるかに高まるということである。

年齢が進むほど多疾患罹患の患者は増えてくるが、それは特に認知症の高齢者に多く見られるというエビデンスが存在する。だが、これまでの研究では、多疾患罹患が認知症のリスクを高めているのかどうかは明らかになっていなかった。

そこで研究チームは、50代からの多疾患罹患がその後の認知症の発症リスクに影響するかどうかを、大規模長期疫学研究のデータから解析した。ホワイトホールII研究と呼ばれるこの疫学研究には、1985-88年に当時35-55歳で認知症ではなかった英国人約1万人のデータが含まれていた。

この研究において、多疾患罹患は、認知症を除く13の慢性疾患のうち2つ以上をもっていることと定義された。参加者が認知症を発症したかどうかは、2019年3月31日までの医療記録などによって調べられた。

参加者10,095名のうち、55歳で多疾患罹患の者は6.6%おり、70歳では32%に増加した。平均32年間の追跡調査期間中に、639名が認知症を発症した。

認知症の発症に影響を及ぼすさまざまな他の要因(性別、年齢、民族、学歴、食生活、ライフスタイル)の影響を除くと、55歳で多疾患罹患であることは、まったく慢性疾患がない場合に比べて、認知症を発症するリスクを2.4倍高めることが明らかになった。

この関係は、多疾患罹患になる年齢が高齢になるほど弱まった。例えば65歳で認知症になるリスクは、55歳までに多疾患罹患になった人では、そうでない人の2.5倍もあったが、60-65歳の間に多疾患罹患になった人では1.5倍に過ぎなかった。

別の言い方をすると、多疾患罹患状態になるのが5年早まるごとに、認知症の発症リスクは18%高まるということであった。

より重度の多疾患罹患(3つ以上の慢性疾患に罹患)では、多疾患罹患の年齢が早まることによる認知症リスクの上昇は、さらに顕著だったという。

例えば、慢性疾患がないかひとつだけある人に比べて、55歳で3つ以上ある人の認知症の発症リスクは5倍近かったが、70歳で3つ以上ある人では1.7倍に過ぎなかった。

本研究は観察的な研究なので、両者に因果関係があるかどうかは何とも言えないという。また研究チームでは、本研究の参加者が、一般の英国人に比べて健康的であるため、データの解釈には注意が必要だとしている。

とはいうものの、30年を超える追跡期間をもつ大規模な疫学研究であり、また認知症の発症リスクではなく、死亡リスクを指標にしたさらなるデータ解析においても類似の結果が得られていることからも、本研究の結果の信頼性は高いだろう、としている。

「認知症には効果的な治療法が存在しないにもかかわらず、その個人や社会に与える影響の大きさを考えるとき、認知症の予防に関する本研究結果は大きな意義があると考えます」と研究チームは述べている。「これらの知見は、慢性疾患の予防と管理が、加齢によるその悪影響から人々を守るうえでいかに大切であるかを明らかにしています。」

出典は『英国医学雑誌(BMJ)

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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