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公開日:2017-12-07

精神疾患の初期からみられる葉酸・ビタミンD欠乏

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精神疾患の患者には、初期から栄養素の欠乏がみられることが多いようだ、という豪州ウェスタンシドニー大学が主導した国際共同研究の結果が発表された。多くの患者の健康状態を改善するための新しい方策へとつながる可能性があるという。

今回研究チームは、初めて精神疾患と診断された患者の、栄養状態について調べた多くの先行研究を系統的にレビューした。統合失調などの精神疾患の早期発見・早期治療は、この病気の回復を最大にするもっとも重要なポイントであるという。

統合失調症は、世界中で2100万人以上の人々に影響を及ぼしているとみられている。この病気が発症した患者の平均寿命は、一般集団に比べて15-20年早いといわれ、身体の健康維持は重要な課題である。

これまでの先行研究において、長期にわたる統合失調症患者には、ビタミンB、C、D、Eなどの栄養素の欠乏がみられることが報告されていた。けれども、今までそうした栄養欠乏が、発症の初期からみられるものかどうかは、完全には検証されていなかったという。

そこで、研究チームは、先行研究をレビューして、6種類のビタミンと10種類のミネラルについて体内レベルを測定した28件の研究(参加総数2,612名)を見つけ出した。全ての患者が、はじめて精神疾患(統合失調症など)と診断されてすぐ、薬物その他の治療が開始される前に、栄養状態を検査されていた。

データ解析の結果、初期の精神疾患は、さまざまな栄養素の欠乏と関連していることが明らかになった。特に顕著だったのは、葉酸(ビタミンB9)とビタミンDだった。さらに、これらの栄養欠乏の程度は、特に若い患者の精神状態の悪化と関連していたという。

今回の解析では、葉酸とビタミンD以外のビタミン・ミネラルには統計的に有意な差異はみられなかったものの、研究チームによれば、それは比較的少人数を対象にした研究が多かったためであって、重要性が低いということではないという。

筆頭研究者のジョセフ・ファース博士は、今回の知見は、将来、初期の精神病患者の治療に栄養療法を加えることに寄与するだろうと語っている。「多くの因子の一つに過ぎないとはいえ、若い精神疾患の患者にしばしばみられる精神と身体の低い健康状態に、確かに栄養欠乏が関わっていると認識することが重要でしょう」とファース博士は言う。

「私たちの研究は、ビタミンDと葉酸の欠乏がみられることを発見しました。これらは以前から長期の統合失調症の患者にみられることが知られていましたが、それはまさに発症の段階から存在するものであり、若い患者の症状の悪化に関連していました」とファース博士は述べている。

「ビタミンDも葉酸も、身体と精神を良好に保つために重要な栄養素です。今回の発見は精神疾患を患う若い患者に健康的な食生活が極めて重要であることを強調するものです。さらに、標準的な治療に加えて回復を促進するための栄養サプリメントなどの使用の可能性も示唆しています。」

また、主任研究者のジェローム・サリス教授は次のように語っている。「私たちの分析結果は、精神疾患の症状が初めて現れたばかりの患者においても栄養欠乏が一般的にみられることを明らかにしましたが、これが病気の結果なのか、あるいは薬物によるものなのか、それとも憂うべきリスク因子のひとつであるのかを明らかにするために、更なる研究が必要とされるでしょう。」

出典は『統合失調症公報』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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