公開日:2024-08-27
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気候変動は、心血管リスクの上昇に強い影響を及ぼしているようだ、という米国ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの研究結果が発表された。特に高齢者、人種・民族的マイノリティ、低所得層への影響が顕著であるという。
心血管疾患は、世界最大の死亡要因であり、死亡者全体のおよそ3分の1を占め、2021年には2千万人以上の死亡が報告されている。心臓病の予防、治療、介入における多くの努力の結果、ここ数十年で実質的な死亡者数は低下してきたが、環境破壊や温室効果ガスなども一因とされる気候変動によってこの低下がストップする可能性がある。
「極端な暑さにさらされると、心臓や血圧に悪影響が及ぶ可能性があります。オゾンや山火事などによる大気汚染に曝されると全身性炎症が誘発される可能性があります。自然災害は精神的苦痛や体調不良をもたらす可能性があります。長期的には、気候変動によって農業生産性や食糧供給の栄養価が低下すると予測されており、これらも心血管系の健康を損なう可能性があります」と筆頭研究者のドゥルブ・カジ博士は述べている。 |
今回研究者らは、気候変動に関連する環境ストレスと心血管疾患の間に関連があるかどうかを判断するために、492件の観察研究の系統的レビューを実施した。
492件の観察研究のうち、182件は極端な気温、210件は地上オゾンの影響、45件は山火事の煙、63件はハリケーン、砂嵐、干ばつなどの異常気象を調査したものだった。またこれらの研究は、高所得国30カ国、中所得国17カ国、低所得国1カ国からのものだった。
データ解析の結果、極端な気温上昇は、心血管疾患の罹患率と死亡率の上昇に強く関連しており、その影響の強さは、実際の上昇温度とそれに曝露した期間によって異なることが明らかになった。
熱帯暴風雨、ハリケーン、台風、洪水のような異常気象もまた心血管疾患のリスクを高めた。2012年のハリケーン・サンディに関する研究では、ニューヨーク市だけで200億ドルの被害が出ただけでなく、ハリケーンの1年後でもなお心血管疾患による死亡リスクの上昇に影響を及ぼしていたことが明らかにされた。 山火事とそれに伴う大気汚染に関するいくつかの研究では、発生源から数百マイル離れた地域の住民にも影響が及び、心停止などのリスクが上昇したと報告された。ただ一方で、そのような影響はなかったとする報告も存在した。 |
研究者らはまた、高齢者、人種および民族的マイノリティ集団の人々、および低所得層の人々が不釣り合いに大きな影響を受けていることを発見した。
「気候変動は、すでに米国および世界中で心血管系の健康に悪影響を及ぼしています。気候変動関連の心血管リスクを軽減するには、とりわけ最も脆弱な集団を対象にした緊急の対策が必要です」とカジ博士はコメントしている。
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