公開日:2023-09-29
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音楽を聴いたり、コーヒーを飲むといった、様々な日常生活における楽しみは、脳の活動に影響を及ぼし、認知機能を高める効果があるようだ、という米国ニューヨーク大学の研究結果が発表された。
これは、「マインドウォッチ(MINDWATCH)」という、ローズ・ファギー准教授らによって開発された、頭の中身をモニターすることができる最先端の技術によって初めて実現可能になったものだという。
6年の歳月を費やして開発されたこのマインドウォッチは、皮膚の電気活動を監視できるウェアラブルデバイスを介して収集されたデータから、脳の活動を解析する一連のアルゴリズムである。これは、情動的なストレスが引き金となって起こる汗の分泌にリンクした電気伝導度の変化に基づいている。 |
『サイエンティフィックレポート』誌に発表されたこの最新の研究では、参加者に皮膚の状態を監視するリストバンドと脳内を監視するヘッドバンドを装着し、音楽を聴いたり、コーヒーを飲んだり、あるいは好みの香水を嗅いだりしてもらいながら認知機能テストを行い、その影響を観察した。
その結果、マインドウォッチによって、音楽やコーヒーが、参加者の脳の覚醒レベルに、測定可能な変化を生じさせ、認知機能テストの成績を向上させる効果のあることが明らかになった。
とりわけ、マインドウォッチは、音楽などの刺激が、「β(ベータ)波帯域」とよばれる脳波活動の増加を引き起こしたことを突き止めたという。香水にもわずかだがプラスの効果が認められ、さらなる研究の必要性が示唆された。
「新型コロナウイルスで世界中の多くの人々の精神的なウェルビーイングが損なわれました。今、認知機能に及ぼす日々のストレッサーのネガティブな影響をシームレスにモニタリングする方法が必要とされています」とファギー准教授は言う。
「マインドウォッチは、現在まだ開発の段階ですが、全てのヒトの認知機能に対する急性ストレスの影響をリアルタイムに検出できるようにするのが目標です。現時点では、マインドウォッチは、認知機能に好ましい影響を及ぼす音楽やコーヒーといった安全で効果的な介入方法を発見するためのツールとして使えるでしょう。」
今回研究者らは、3種類の音楽をテストした。エネルギッシュな曲、リラックスできる曲、そして対象者の好みを反映してAIが生成した曲である。リラックスできる曲よりもエネルギッシュな曲に認知機能のパフォーマンスをより向上させる効果がみられたが、もっとも効果的だったのはAIが生成した音楽だった。だが、音楽の種類についてはさらなる検証が必要であるという。 コーヒーの摂取にも、音楽ほど顕著ではないものの、有意なパフォーマンスの向上がみられた。香水の効果は控えめなものだった。 |
研究チームでは、現在もマインドウォッチが脳の活動を一貫して監視する技術の有効性と、その脳の活動を調節する様々な介入についての検証を行っている。多くのヒトに当てはまる一般的な介入もあれば、そうでないものもあるという。
マインドウォッチの正式名称は、「ウェアラブル適応型閉ループアーキテクチャ用マルチモーダルインテリジェント非侵襲的脳状態デコーダ(Multimodal Intelligent Noninvasive brain state Decoder for Wearable AdapTive Closed-loop arcHitectures)」であり、ファギー准教授はこの研究で米国・国立科学財団CAREER賞を受賞している。
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