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公開日:2019-11-07

手足の筋肉量が低下した高齢者は死亡リスクが高まる!?

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手や足の筋肉が少ない高齢者は死亡リスクが高まるようだ。65歳以上の高齢者を対象にした研究で、四肢の筋肉量が少ない女性は、そうでない女性に比べて、総死亡リスクがなんと63倍も高く、男性でも11.4倍高いことが、ブラジル・サンパウロ大学の研究で明らかになった。

身体の筋肉、骨、脂肪などの量と位置、特に手足の筋肉量を測定することは、高齢者の寿命を予測する効果的な手段になりそうだ、と研究者らは述べている。

今回ローザ・マリア・ロドリゲス・ペレイラ教授らの研究チームは、地域社会における調査からサルコペニアが疑われる個人を見つけるための新たな方程式を開発した。

65歳以上の高齢者839名(男性39%、女性61%)を対象に身体組成を測定した後、数年間の追跡調査を行って病気や死亡を確認し、両者の関係を解析した。約20%の者が低筋肉量と診断された。

4年間の追跡期間中に、132名(15.8%)が死亡し、そのうちの43.2%は心血管系疾患によるものだった。

「私たちは、彼らの身体組成を測定しました。特に手足の筋肉量、皮下脂肪量、腹部脂肪量に焦点を当てたのです。そして、続く数年間の死亡リスクを予測するには、どの因子が重要か決定しようとしました」とペレイラ教授は語っている。

身体組成は、DXAと呼ばれるレントゲンを用いた器械によって測定した。DXAは、骨密度測定装置と呼ばれることもあり、全身の骨や筋肉の状態をレントゲンで透過撮影し、画像処理によってその組成を割り出す装置である。骨粗しょう症の診断などによく使われる。

筋肉は加齢とともに次第に量と質ともに低下する。加齢による筋肉減少はサルコペニアと呼ばれ、世界中で近年大きな問題になりつつある。ブラジル老年医学会によれば、80歳以上のブラジル人の約46%がサルコペニアである。

サルコペニアは、特に骨粗しょう症が同時に見られるときに特に高齢者の脆弱性を高める原因となりやすい。転倒や骨折、その他の外傷がその引き金となる。骨密度の低下が高齢者の死亡リスクを高めることも報告されている。

今回の調査結果を全体的にみると、亡くなった人は、生存者に比べて、高齢で運動量が少なく糖尿病や心血管障害のある人が多かった。女性の場合は、BMIが低い傾向がみられ、男性の場合は、転倒を経験した人が多かった。

統計解析によってこれらの因子の影響を取り除き、身体組成と死亡リスクの関係だけを抽出してみると、女性では筋肉量の低下だけが死亡リスクに有意に関連し、男性では腹部脂肪も死亡リスクに有意に関連することがわかった。腹部脂肪が6平方センチ増えるごとに死亡リスクは倍増した。ただし、皮下脂肪は逆に死亡リスクを低下させた。

「男性は、四肢の筋肉量だけでなく腹部脂肪も死亡リスクの大きなファクターでしたが、女性の場合は、筋肉量に強く影響されることがわかりました」とペレイラ教授は語っている。

閉経に関連したホルモン変化がこの男女の違いを説明できるかもしれないという。「保護的な女性ホルモンの急激な現象が、骨格筋の保護的な役割を強化するのかもしれません。このような急激な変化は男性では起こりません」と教授は言う。

筋肉量の低下は40過ぎから起こり始めるが、体重増加の陰に隠れて気づかないことが多い。50歳を過ぎると年1-2%の速度で筋肉が失われていくと推定される。これを加速するのが座位中心の生活、貧しい食生活、慢性疾患、入院などである。

骨格筋は、身体を動かしたりバランスを取るのに必要なだけでなく、血糖値や体温の維持にも重要である。サルコペニアは、身体活動によって予防・回復が可能であり、その際には、たんぱく質の摂取が重要である、と研究チームはコメントしている。

出典は『骨及びミネラル研究雑誌』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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