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公開日:2025-03-24

広範囲の水産物がマイクロプラスチックに汚染されている

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衣料品や包装材その他のプラスチック製品から脱落する微細な粒子が、魚介類を汚染しているようだ、という米国ポートランド州立大学の研究結果が発表された。研究者らは、環境中へのマイクロプラスチック汚染に警鐘を鳴らしている。

環境中のプラスチック粒子は、フィルム、フォーム、ペレット、ビーズ、繊維、破片、タイヤ摩耗粒子などさまざまな形状で存在し、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの種類がある。

エリーゼ・グラネック教授らの研究チームは、太平洋カキやマテ貝などの二枚貝におけるマイクロプラスチック汚染に関する過去の研究を元に、対象を食用の魚類や甲殻類に拡大して検討を行った。

論文の筆頭著者であるサマー・トレイラー氏は、グラネック教授、マリリン・ダンカン氏らと共に、米国オレゴン州の魚介類におけるマイクロプラスチック汚染に関する知識ギャップを埋め、食物連鎖や消費者への到達経路における魚介類の位置付けをより深く理解することを目指して検討を行った。

研究者らは、オレゴン州で環境的にも文化的にも重要な6種類の魚介類(クロメバルblack rockfish、キンムツlingcod、キングサーモンChinook salmon、太平洋ニシンPacific herring、太平洋ヤツメウナギPacific lamprey、ボタンエビpink shrimp)の食用組織に含まれる人為的粒子の形状と量を測定した。

研究者らはまた、食物連鎖における位置が食用組織の汚染物質の量に影響するか、また、漁船で直接採取された試料と、店頭で購入した試料に違いがあるかどうかを調べた。

データ解析の結果、182件の試料のうち、180件から1,806個の疑わしい粒子がみつかった。最も多かったのは繊維で、次いで多かったのは破片とフィルムだった。

粒子が最も多かったのは、水面下でろ過摂食するボタンエビの食用組織中だった。最も少なかったのはキングサーモンで、次いでクロメバルとキンムツだった。

「私たちが発見したのは、より小さな生物のほうがより多くの人為的粒子を含んでいるようだ、ということです」とグラネック教授は言う。「エビやニシンなどの小魚は動物プランクトンなどさらに小さな生き物を食べていますが、別の研究で、こうした動物プランクトンが大量に生息するエリアでより高濃度のプラスチックが見つかっており、これらの人為的粒子は動物プランクトンに似ているため、エビや小魚がそれらを摂取する可能性が高いのだと思われます。」

研究者らは、捕獲後の加工過程において食品包装材などからの追加の汚染があることを予想していたが、ボタンエビでは逆に低かった。ただし、研究者らは、粒子の測定前に試料を水洗したので、加工中に表面に付着した可能性のある追加の汚染物質は除去された可能性もあるという。

「マイクロプラスチック粒子が腸から筋肉などの他の組織に移行しているようにみえることは大きな懸念材料です」と共著者のスーザン・ブランダー准教授は述べている。「このことは他の生物にもあり得ることで、ヒトも例外ではありません。」

研究者らは、粒子がヒトの食べる魚介類の筋肉組織に移行するメカニズムをさらに研究すると共に、人為的粒子を規制するための政策介入が必要だろう、としている。

「人々に水産物を食べるのを止めようと言っているわけではありません。というのも、マイクロプラスチックはペットボトル飲料やビール、ハチミツ、牛肉、鶏肉、ベジバーガー、豆腐などあらゆるところに存在しているからです」とグラネック教授は述べている。

「私たちが製品を使ったり廃棄したりすることでマイクロプラスチックが放出されると、それが環境中をめぐって再び私たちの食べ物に入り込んでくるのです。私たちが環境中に放出したものは、結局私たちの食卓に戻ってくるというわけです。」

出典は『Frontiers in Toxicology

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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