公開日:2019-05-22
世界の最新健康・栄養ニュース
寝る直前にカゼインのシェイクを飲むことは、余分な脂肪をつけることなく、レジスタンストレーニングによる筋量・筋力アップを助けるようだ、という研究結果が発表された。カゼインは牛乳に含まれる主要なたんぱく質である。
『栄養学の最前線』誌に発表されたこのレビューによると、これまで多くの研究で睡眠中の栄養状態が筋肉を増強するためのカギになることが示唆されており、深夜に摂ったたんぱく質は脂肪にはならないのだという。
「いくつかの研究で、就寝前のたんぱく質摂取が睡眠中の筋たんぱく質の合成を高めることが示されています」と筆頭研究者でオランダ・マーストリヒト大学のティム・スナイダーズ助教授は述べている。「この知見から、就寝前のたんぱく質摂取がもっと長時間にわたって有効ではないか、定期的なレジスタンストレーニング中の筋肉も増強するのではないか、というアイデアが生まれました。 |
スナイダーズ博士は、自分たちの2015年の研究でこのアイデアを実際に証明してみせた。44名の健康な若い男性を対象に、12週間のトレーニングを実施し、半数の者には就寝前に30gのカゼインと15gの炭水化物の入ったプロテインシェイクを飲んでもらい、残りの半数の者にはカロリーゼロの飲料を飲んでもらった。
トレーニングの効果で、どちらのグループも最大挙上重量と大腿四頭筋が増大したが、特にプロテインシェイクを飲んだグループの方で効果が高かったという。
ところで、この筋力アップの効果は、就寝直前のたんぱく質のためか、それとも単に1日のたんぱく質やカロリーが増えたためなのだろうか?
実はこれまで、それを証明しようとした論文はひとつしかなく、しかも証明には失敗しているのだった。脂肪を除いた筋肉量の増加を8週間のウェイトトレーニングで証明しようとしたもので、カゼインのサプリメントを晩に飲む群と朝に飲む群を比較した。両者には統計的にみて有意な差がなかった。おそらく対象者が26人と少なすぎたためだろうとスナイダーズ博士はみている。
「私たち自身の研究結果から計算すると、この朝と晩の違いを証明するためにはかなり多くの対象者が必要になります」とスナイダーズ博士は言う。
とはいうものの、間接的な指標を用いた研究はたくさんあり、それらは就寝前のたんぱく質の摂取が有効であることを証明しているという。
基本的に、就寝前にたんぱく質を摂取することには、翌日たんぱく質摂取を補う働きがある。筋肉は、血液中のアミノ酸(たんぱく質を構成する物質で、摂取たんぱく質を分解して作られる)がなければ作られない。ところが、血糖とは異なり、アミノ酸を貯蔵する器官は身体のどこにもないので、血液中のアミノ酸濃度を一定に保つには、たんぱく質(またはアミノ酸)を食べる以外にない。
「500人を超えるアスリートの調査で、彼らが体重1kg当たり1.2g以上のたんぱく質を1日3回の食事から摂取しているものの、夕方以降には7gのたんぱく質しか摂っていないことが分かっています。そのために、いちばん筋肉が成長する睡眠中には血中のアミノ酸レベルが低くなってしまうのです」とスナイダーズ博士。
就寝前のたんぱく質はそれを防ぐが、それだけではないのだ、とスナイダーズ博士は言う。
「食事ごとのたんぱく質の補給が、筋肉合成に与える影響は、付加的なものです。私たちの研究では、就寝前の60gのホエイたんぱく質の摂取は、翌朝の高たんぱく質食による筋たんぱく質合成を変化させませんでした。」
「さらに、別の研究グループの結果では、就寝時のたんぱく質の補給は、翌朝の食欲にも影響せず、その結果たんぱく質やカロリーの総摂取量にも影響しなかったのです。」 ところで、寝る前にたんぱく質を摂取することは、長時間の不活動期の直前にカロリーを摂ることによる肥満のリスクを高めるのではないかと思うかもしれないが、事実はさにあらず。 |
「8週間にわたる、朝と晩のカゼイン摂取の効果を調べた研究から、定期的に運動を継続している限りそれが脂肪を増やすことはないことが分かっています」とスナイダーズ博士は述べている。「とはいえ、そうした研究は対象者も少ない予備的な研究が大半なので結果の解釈には慎重を期する必要があるでしょう。」
研究チームは、まだ結論めいたことが言える段階ではないとしながらも、レジスタンストレーニング中の就寝前のたんぱく質摂取には、さらなる研究を実施する価値があるだろう、と結論付けている。
© SUN CHLORELLA CORP.