公開日:2023-01-31
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加齢による筋肉の衰えにはセラミドの蓄積が関係しており、それを抑えることで筋力の維持が可能かもしれない、というマウスを用いた実験結果が、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のヨハン・オーレックス教授らによって報告された。
セラミドは、カロリーにはならないが細胞中でさまざまな機能を発揮するスフィンゴ脂質の一種であり、肌の保湿に欠かせない潤い成分としてスキンケア製品にも使われている。
「スフィンゴ脂質やセラミドは、今なお研究者の興味を惹きつけてやまない、きわめて複雑な脂質で、多くの機能を有していることから、加齢における役割の解明に多くの期待が集まっています」と筆頭著者のピリッカ=ペッカ・ローリラ医師は述べている。 |
今回研究チームは、セラミドを脂質とアミノ酸から生合成するのに必要なSPTなどのたんぱく質が、加齢に伴って大量に作られることを発見した。
さらに、高齢のマウスにセラミドの機能を阻害する物質(抗生物質マイリオシンや阻害剤タケダ-2など)を投与したり、アデノ随伴ウイルスを用いて筋肉中のセラミド合成を阻害すると、細胞の過剰なセラミドが減り、その結果、加齢に伴う筋肉量の減少が抑えられ、マウスはより長距離を走り続けることが可能になったという。
このセラミドを阻害することの効果について、その作用機序をより深く追求するために、研究チームは、RNA配列決定技術を用いて、筋肉中で作られるすべての遺伝子産物の解析を行った。
「その結果、セラミドを阻害することで、筋肉幹細胞が活性化し、より多くのたんぱく質が合成され、筋肉線維のタイプが変化して、より大きくより強い筋肉が作られるようになることが判明しました」と共著者のマーチン・ヴォールヴェンド博士は述べている。
研究チームはさらに、人間にとってもマウスと同じように、筋肉中のセラミドを減らすことが有益であるのかどうかを明らかにしようとした。 ヘルシンキで70-80歳の高齢男女数千名を調査した結果、筋肉中のスフィンゴ脂質の生産を低下させる遺伝子を持った人が25%いることがわかったが、彼らは、全般的により長く歩くことができ、力持ちで、椅子からの立ち上がり動作が良好であることがわかった。これは、彼らがより健康的に年を重ねているということを意味するものであり、それはマウスにセラミド阻害剤を投与した時の効果に類似していたという。 |
「こうした発見は、人間にも投与可能なセラミド阻害剤を開発しようという気持ちを高めてくれるので、とても重要です」とオーレックス教授はコメントしている。
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