公開日:2018-03-27
世界の最新健康・栄養ニュース
妊娠中のビタミンD補給は、生まれてくる子供の肥満を予防する助けになるかもしれない。
妊婦のビタミンD欠乏が、おなかの赤ちゃんを太り易い体質にするようだ、という米国サザンカリフォルニア大学医学部からの研究結果が発表された。
研究チームは、妊娠初期にビタミンD欠乏症だった母親から生まれた子供が、そうでない子に比べて、6歳の時点での腹囲が平均0.5インチ(約1.3cm)大きいことを発見した。子供たちは体脂肪も平均2%多かったという。
「大した増加には見えないかもしれませんが、私たちは体脂肪が30%ある大人の話をしているのではありません」と主任研究者のヴァイア・リダ・チャツィ准教授は語っている。「0.5インチでも、その後の人生の長さを考えれば、それは大きな問題なのです。」 |
『小児肥満』誌1月号に掲載されたこの研究は、ギリシャで532組の母子を対象に実施された。母親の妊娠中に血中ビタミンDの濃度を測定し、子供の4歳時と6歳時の健康状態や体重を測定した。
米国ではティーンの75%がビタミンD不足であることが2009年の研究で報告されているという。ビタミンDは日光にあたれば体内で合成されるが、近年の研究の進展で、心臓病やがんなど多くの深刻な病気のリスクに関連していることが明らかになってきた。
新生児のビタミンDはほぼ母親に依存する。従って、母親にビタミンDが足りていなければ、子供にも足りていない可能性が高いのである。
ビタミンDの95%は体内で合成され、残り5%が卵や肝油、あるいは強化食品(乳製品やシリアル)から摂取される。
「日照時間の多い場所でもビタミンD欠乏が起こる原因はよくわかっていません。でもそのような人々は恐らく極めて長時間、屋内で仕事をしたりテレビを見ているのでしょう」とチャツィ准教授は語っている。「あるいは日焼け止めを塗り過ぎてビタミンDの生産を妨害しているのかもしれません。」
過去20年にわたって、妊婦のビタミン欠乏の割合が上昇している。この研究では65%の妊婦が、胎児の臓器が発達する妊娠初期にビタミンD不足の状態だったという。
これまで動物実験で、ビタミンDが前脂肪細胞から脂肪細胞への変換を抑えることが示されている。ヒトの脂肪細胞を用いた試験管内の実験でも、ビタミンDが脂肪細胞の変換を抑えることが示されている。
「ビタミンD欠乏の母親から生まれた子供が肥満になり易いのは、ビタミンDに脂肪細胞の形成を抑える働きがあるからだ、というのは充分ありそうなことです」とチャツィ准教授は語っている。「妊娠中の最適なビタミンDレベルが子供を肥満から守ってくれるのでしょう。けれども、私たちの研究結果を確認するためにもっと多くの研究が必要です。それまでの間、妊娠初期のビタミンDのサプリメントが、将来の世代を守る手軽な方法になるでしょう。」 この研究に参加したギリシャ女性は誰ひとりビタミンDサプリメントを摂取していなかったが、多くの米国医師は妊娠した女性にただちに葉酸、鉄、カルシウムなどを含むビタミン剤の摂取を奨めている。それにはビタミンDも400IU(10μg)程度含まれているのが普通だ。 |
ただし、大量のビタミンDの摂取は心臓、血管、腎臓などの障害の原因ともなるので注意が必要である。
(なお、日本人の食事摂取基準2015年版において、成人女性のビタミンDの目安量は5.5μg、妊婦の場合はこれに7.0μgを付加(=合計12.5μg)が推奨されている。耐用上限量は100μg。)
© SUN CHLORELLA CORP.