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公開日:2022-02-22

よく眠る人は食べる量が減る:ダイエットの新機軸?

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夜間の睡眠時間が延びると、カロリーの摂取量も低下することが、米国シカゴ大学医学部の研究で明らかになった。

肥満の原因を知り、肥満の蔓延を防ぐためのベストな方法を知ることが重要だ、と筆頭研究者のエズラ・タサリ医師は言う。「昨今の世界的な肥満の蔓延は、専門家によれば、大部分が運動不足ではなく食べ過ぎということで説明できます。」

今回、タサリ医師らは、普段の生活において充分な睡眠を取れば、過剰なカロリー摂取を抑えて減量につながるのではないかと考え、若くて太り過ぎで、しかも夜間の平均睡眠時間が6.5時間未満の成人80名(21-40歳)を対象にランダム化臨床試験を実施した。参加者はランラムに2群に振り分けられ、一方には一回だけの簡単な睡眠カウンセリングセッションを行い、別の一方にはなにも行わなかった。

その結果、睡眠カウンセリングを受けた半数の参加者は、カウンセリングを受けなかった残りの半数に比べて、夜間の睡眠時間を平均1.2時間延ばしただけでなく、1日の平均カロリー摂取量を270kcal低下させたことが明らかになった。

「何年もの間、私たちや別の研究グループから、睡眠不足が食欲コントロールに影響して食べる量を増やし、それが長い間の体重増加の原因になっていることが指摘されていました」とタサリ医師は述べている。「最近になってやっと、わたしたちは気が付いたのです。『そうか、それが睡眠不足で起こるなら、睡眠を増やせば逆の効果が得られるんじゃないの?』って。」

今回の研究は、単に睡眠時間の延長がカロリー摂取に影響を及ぼすことを検証しただけでなく、現実世界において特に食習慣に介入することなくそれを実施できたことが重要である、と研究チームは言う。参加者は、自分のベッドで眠り、ウェアラブルデバイスで睡眠を記録した以外は、全て通常の生活を送った。食事や運動に関する指導は一切しなかった。

「睡眠に関する多くの研究では、実験室で短期間、たとえば2日間過ごして、その間の睡眠時間や提供された食事の摂取量を測定することが多いのです」とタサリ医師は説明する。「私たちの研究では、私たちがしたのは、睡眠についてのカウンセリングだけで、参加者は、普段の生活そのままに自由に好きなものを食べ、それを記録する必要もありませんでした。」

その代わりに、研究チームが用いたのが、「二重標識水法」というものだった。水を構成する酸素と水素に非放射性の安定同位体を混ぜたものを飲んでもらう。そうすると、その後数週間にわたる尿を集めることで、体内の全体的なカロリー消費量を正確に把握できるようになる。これは、人間の現実世界におけるカロリー消費を測定する現在最も信頼性の高い方法として知られている。

睡眠時間が延びた参加者は、トータルにみて、カロリー摂取量を1日平均270kcal低下させた。これは、ずっと続くなら、3年で12kgの減量に相当するものである。

この研究の介入のシンプルさは、おそらく最も驚くべき要素ではないだろうか。「私たちはただ1回の睡眠カウンセリングセッションを行っただけで、参加者の睡眠時間が充分に変化することを観察しました」とタサリ医師は言う。「個別に好ましい睡眠習慣のあり方を指導して、彼らの睡眠環境について議論し、どうすれば改善できるかを具体的にアドバイスしたに過ぎません。重要なのは、参加者が睡眠について指導されるという予断を持たないように、募集時にそれがわからないようにしたことかもしれません。そうすることで、私たちは参加者の普段の本当の睡眠習慣について知ることができたからです。」

本研究では、睡眠行動に影響及ぼす因子について網羅的に評価することはしていないが、「明らかに、就眠前の電子機器の使用を制限することが介入のかなめだったようです」とタサリ医師は述べている。

ただ一度のカウンセリングセッションで、参加者の平均夜間睡眠時間は長くなった。他の生活習慣に対する介入はなにひとつなかったにもかかわらず、大部分の参加者は、食事の量を大きく減らした。中には、1日500kcalも減少した参加者もいた。

参加者は、睡眠とカロリー摂取量に関するベースライン情報を収集するための2週間と、続いて睡眠介入の効果を監視するための2週間の合計4週間だけ研究に関与しただけである。

「この研究は減量の研究ではありませんでした」とタサリ医師は言う。「けれども、わずか2週間で、カロリー摂取の減少と負のエネルギーバランス、つまりカロリー摂取量が消費量より少なくなったことを観察できました。健康的な睡眠習慣をより長く継続すれば、臨床的に意味のある減量が観察されるでしょう。多くの人々が体重を減らすためにカロリー摂取を抑える方法を見つけるのに困難を覚える中で、そう、ただもっと長く眠るだけであなたは体重を実際減らすことが可能かもしれないのです。」

研究チームでは、今後この結果の根底に潜むメカニズムを明らかにすると共に、より大規模の臨床試験で睡眠による減量効果を検証したいとしている。

出典は『JAMA内科学

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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