公開日:2015-06-19
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へその緒が重要なのは胎児のときばかりではないかもしれない。数年前に、スウェーデン・ウプサラ大学の研究チームが、新生児にとってもへその緒が重要であることを報告した。今回はその追跡調査で、へその緒を切るタイミングをわずかに遅くすることで、4歳になった時の子どもの運動神経が高まることが報告された。特に男子で効果が高かったという。
以前の研究において、オーラ・アンダーソン博士らの研究チームは、400名の新生児を対象にした臨床試験で、臍帯結紮の時間を遅らせた場合の効果を検証した。そして、通常は生後10秒以内に縛って切断するへその緒を、縛るタイミングを3分間だけ遅らせることで、生後4か月のときの貧血の割合が顕著に少なくなることを報告していた。対象になった母子は共に健康で栄養状態も良好であり、早産児は含まれなかった。
「臍帯を縛る前に3分間待つことで、母体の血液が新生児の体内に移行し続けることになります。赤ちゃんは100mlほどの余分な血液を母親から受け取りますが、これは大人の2リットル分の血液に相当するものです」とウプサラ大学の小児科医であるアンダーソン博士は述べている。 |
世界中の多くの地域で、へその緒は出生後ただちに結紮され切断されるのが一般的な手順になっているが、臍帯血に含まれる鉄分を受けとり損ねてしまうため、貧血になりやすい。貧しい国々では、臍帯血の移行が終了する前にへその緒を縛ってしまう慣習は、小児の発育に特に深刻な影響を及ぼす可能性が高い、と研究チームは述べている。
今回『JAMA小児科学』誌に発表された論文では、上記の先行研究で対象となった新生児のうちの263名(69%)を4年後に再調査した結果が報告されている。対象児は、知能(IQ)テストと認知機能検査を受け、また両親にはアンケート調査が実施された。
調査の結果、臍帯結紮を生後直ちに(10秒以内)行った場合と、3分間待ってから行った場合では、両者の知能(IQ)に違いはみられなかった。全体的な発育状況もまったく変わらなかった。 けれども、認知機能検査と両親へのアンケート結果を解析した結果、3分間待って結紮した子どものほうが、4歳時における運動神経がわずかに優れていることが明らかになった。子どもの性別を考慮するとその差はより一層明確に現れた。男の子は、全般的に3分間の遅延結紮で、運動神経が向上することが明らかだったという。これは、男児の方が生まれたときに潜在的に鉄分が足りないことが多いために、臍帯の遅延結紮の効果がより強く表れたためだろう、と研究チームは推測している。 |
「生後すぐの時期から、女児は一般的に鉄分を充分に体内に保持しているが、男児は鉄欠乏症になり易いことが知られています。私たちの研究が、世界中で新しい臍帯結紮の基準として使われるようになることを期待しています」とアンダーソン博士はコメントしている。
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