健康食品を科学的に考察する情報サイト

サン・クロレラ 研究サイトSUNCHLORELLA LAB

健康食品を科学的に考察する情報サイト

世界の最新健康ニュース

時々の健康にかかわるニュースや最新の話題をお届けします。

世界の最新健康ニュース

公開日:2022-12-27

たんぱく質の摂取が肥満増加のキーポイント

世界の最新健康・栄養ニュース

加工食品の増加が肥満の流行をもたらしたのは、身体がたんぱく質を欲しているためである、という豪州シドニー大学からの研究報告。

研究チームは、豪州人9,341名を対象に1年にわたって食習慣を調べた研究で、高度に加工され精製された食品が、西洋社会における肥満率の上昇の主要な原因であることを裏付けた。

『肥満』誌に掲載された本研究は、豪州統計局による国民栄養身体活動調査に基づくものであり、「たんぱく質レバレッジ仮説」を裏付けるものであるという。

「たんぱく質レバレッジ仮説」は、デビッド・ラウベンハイマー教授とスティーブン・シンプソン博士によって2005年に提唱されたもので、人々が脂肪と炭水化物を摂り過ぎるのは、身体がたんぱく質に対する強い食欲を持っているためだ、というものである。現代の食生活では、多くの高度に加工精製された食品が消費されるが、それらは一様にたんぱく質含量が低いため、身体のたんぱく質に対する欲求を満たすためにはよりエネルギー密度の高い食品を大量に食べ続けなければならないのである。

「人々がより多くのジャンクフードあるいは高度に加工精製された食品を食べるので、相対的にたんぱく質の摂取量が減る結果、肥満になるリスクが上昇します。私たちは、肥満が慢性疾患のリスクを高めることを知っています」と筆頭研究者のアマンダ・グレッチ博士は述べている。

「私たちの身体はたんぱく質に対する欲求を満たすために食べる、ということがますます明らかになっています」とラウベンハイマー教授は言う。「けれども、問題は西洋型の食生活においては、ますますたんぱく質が減少しているということです。そのため、あなたはたんぱく質の欲求を満たすためにより多く食べることになるのです。」

「ヒトは、他の多くの動物と同様に、エネルギーを供給する主要な栄養素である脂質と炭水化物以上に、たんぱく質に対して強い食欲を持っています。ですから、食事中のたんぱく質が脂質や炭水化物で薄められてしまうと、私たちは、同じ量のたんぱく質を食べるために、より多くのエネルギーを摂取することになるのです。」

たんぱく質は生命の維持に欠かせない構成要素である。身体を形作るすべての細胞に存在し、細胞の修復には新しいたんぱく質の摂取が欠かせない。ヒトの身体の中には100万種を超えると推定される種類のたんぱく質があって、それぞれが機能をもって働いている。たんぱく質の供給源としては、肉、牛乳、魚介類、卵、大豆、豆類、特定の穀類が挙げられる。

研究チームは、9,341名の豪州人(平均年齢46.3歳)を対象として2011年5月から2012年6月にかけて実施された国民栄養身体活動調査のデータを解析した。対象者の1日平均エネルギー摂取量は、8,671キロジュール(kj)であり、たんぱく質の割合はエネルギー全体の18.4%だった。炭水化物は43.5%、脂質は30.9%、食物繊維は2.2%でアルコールが4.3%だった。

エネルギーの摂取量と栄養素の比率について解析したところ、それがたんぱく質レバレッジ仮説を裏付けることが明らかになったという。つまり、朝に充分なたんぱく質を摂らなかった人は、その後の食事でより多く食べるが、朝に充分なたんぱく質を摂った人は、その後の食事の量が増えず、実際には1日を通しての全エネルギー摂取量が低下したのである。

言い換えると、朝に充分なたんぱく質を摂取した人は、摂取しなかった人に比べて、その日の3番目の食事(通常は夕食)において、エネルギー摂取量が統計的に有意に少ないことが明らかになった。つまり、朝にたんぱく質が足りていなかった人は、一日を通じてたんぱく質に対する食欲が高まるようであった。

また、朝に充分なたんぱく質を摂った人は、1 日を通してより多くの飽和脂肪、砂糖、塩、アルコールを含むエネルギー密度の高い不健康な食品を摂取し、推奨される食品群(穀物、野菜/豆類、果物、乳製品、肉) の摂取量が少なくなった。その結果、食事バランスが全体的に悪くなり、食事の摂取量は増えてもたんぱく質の割合が減少した。研究者らはこれを「たんぱく質希釈」と呼んでいる。

「この結果は、たんぱく質に対する強い食欲が、低たんぱく質の高度加工食品から、より多くのカロリー摂取を導いてしまう、という肥満の統合された生態学的およびメカニズム的説明を支持するものです」とラウベンハイマー教授はコメントしている。

出典は『肥満

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
関連記事
  • Google Bookmarks Google Bookmarks
  • はてなブックマーク はてなブックマーク