公開日:2020-04-24
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毎日たくさん歩く人は、死亡リスクの低いことが、新たな研究で明らかになった。米国の国立研究機関の研究チームによれば、死亡リスクの低下には歩数が重要であり、歩行強度には関係がなかったという。
この研究は、『米国医学会誌(JAMA)』の2020年3月24日号に掲載された。
「私たちは身体活動が身体に良いことを知っています。でも具体的に、どれくらい歩けば死亡リスクを下げられるのか、どれくらい速足が良いか、といったことについては、よくわかっていませんでした」と筆頭研究者のペドロ・サン=モーリス博士は述べている。「私たちは、身体活動量計やスマホアプリを使って、この疑問を追究することで、歩行の健康メリットについてより詳しく知りたいと考えました。」 |
既に、歩数と死亡率の関係については多くの研究がある。けれども、その多くは高齢者や障害をもつ人々を対象としていた。今回の研究においては、米国国民健康・栄養調査(NHANES)から40歳以上の健康な米国人4,840人(平均年齢56.8歳、54%が女性、36%が肥満)を対象としており、2003年から2006年の間に7日間身体活動量計を付けて測った歩数データと、2015年まで追跡した死亡データが用いられた。
身体活動量計は、単に歩数だけでなく、その運動強度も一緒に測れるので、研究チームは、死亡率と歩数および歩行強度の関係について、年齢・性別・喫煙・飲酒など死亡率に影響する種々の要因の影響を除外(調整)して検討した。
対象者の1日平均歩数は、9,124歩だった。平均10.1年間の追跡調査期間中に1,165名の死亡が確認された。406名は心血管疾患、283名はがんだった。
解析の結果、1日に4,000歩しか歩かない人に比べて、1日に8,000歩歩く人は、全ての死因による総死亡リスクが51%低いことが明らかになった。1日に12,000歩なら65%低かったという。
これとは対照的に、歩行の強度、つまり速く歩くかゆっくり歩くか、力強く歩くか緩やかに歩くか、といった違いは、歩数の影響を調整すると、死亡リスクに影響を与えなかった。同じ歩数なら歩き方は関係ないということである。 「私たちは長年かけて高齢者にいかに身体活動が重要か研究を重ねてきました。今回、より広い年齢層の大規模集団を対象にした研究で、それを裏打ちする結果が得られたことは大変よいことだと思います」と共同研究者であるエリック・シモーラ博士は述べている。 研究チームは、対象者別の分析で、男女ともに、若者も高齢者も、また白人も黒人も、歩数が多くなればそれだけ死亡リスクが低下することを発見した。また歩数の増加は、心血管疾患およびがんによる死亡リスクも低下した。 |
今回の結果は、さまざまな交絡要因を調整した信頼性の高いものだが、観察的研究であるため、はっきりした因果関係はいえない。とはいえ、この結果は、活発に運動することを推奨する種々のガイドラインと一致するものであり、それを疑う理由はない。身体活動を増やせば健康利益が得られるのである。ちなみに米国では1週間に150分以上の中-高強度の身体活動を推奨している(日本では、1日60分(65歳以上は40分)以上、元気に身体を動かすことが推奨されている)。
「活発に身体を動かすことには多くのメリットがあります。肥満になりにくく、心疾患、糖尿病、種々のがんのリスクも低下します。なにより、運動することで気分がよくなり良く眠れるようになります」と共同研究者のジャネット・フルトン博士は述べている。
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