本演題は、審査委員によるサイエンスおよびプレゼンテーションの審査において、クロレラの作用手法および試験計画が評価され若手奨励賞を受賞致しました。
- 研究目的
- 2型糖尿病は世界的に増加しています。2型糖尿病が進行していくと、脳卒中や腎症、認知症などの合併症を起こすことがよく知られています。そこで、2型糖尿病予備群のヒトがクロレラを摂取することで、 どのような変化が起こるかをプラセボ対照ランダム化比較試験で検証しました。
- 試験方法
- 2型糖尿病予備群(HbA1c値*1:6.0%~6.4%)の成人男性60名をクロレラ食品摂取群30名とプラセボ食品(クロレラを含まない同一形状の粒)摂取群30名の2群に分け、食品の摂取期間を12週間としました。それぞれについて、摂取開始前、摂取開始4週間、8週間、12週間、16週間後に血液検査、および摂取開始前と12週間後に血液特殊検査とメタボローム解析*2により、血液中の物質の変化を評価しました。
- 結 果
- メタボローム解析により、クロレラ食品摂取群で、脂肪酸の代謝が向上し、酸化ストレスの改善が 示されました。
- クロレラ食品摂取群は摂取前に対して、4週目に総コレステロールが有意に低下しました(p=0.029)。
更に、ビタミンB群の1種で抗酸化作用が知られている葉酸の濃度が増加し、動脈硬化や心血管疾患、認知症の発症と関連しているホモシステインが有意に低下しました(p < 0.001)(図1)。なお、葉酸は血液中のホモシステインを低下させることが知られています。
- 以上の結果より、クロレラの摂取によって脂肪酸の代謝と共に酸化ストレスの改善が認められました。2型糖尿病への進展は脂肪酸の代謝が悪化することや酸化ストレスが増大することが知られています。 このことから、クロレラの摂取は2 型糖尿病への進展抑制が期待されます。また、糖尿病だけに留まらず、葉酸の増加やホモシステインの低下により、貧血、動脈硬化、心血管疾患、脳血管疾患、認知症などの幅広い予防が期待できます。この様な作用が期待できるのは、クロレラが含む多くの栄養素が相互的、補完的に働き、緩やかに体内バランスを整える結果と考えています。クロレラはあくまでも食品であり、体内に取り込まれた成分の代謝は他の食品同様なので、継続的に摂取することでクロレラの作用を享受出来るものと考えられます。