- 研究目的
- 加齢に伴う動脈スティフネス(血管の硬度)の増大は、心血管系疾患の独立した危険因子となります。これまでに我々はクロレラ摂取により若年者の動脈スティフネスが改善することを報告しましたが(第10回日本抗加齢医学会総会,2010)、そのメカニズムや中高齢者における効果については検証されていません。そこで今回臨床試験を実施しその検証を行いました。
- 試験方法
- 45歳~75歳(平均62.2歳)の健康な男女33名を対象にクロレラ群・プラセボ群の二重盲検群間比較試験を行いました。被験者には4週間クロレラ又はプラセボ錠を1日2回、1回に15粒ずつ摂取してもらいました。摂取期間の前後に上腕と足首で容積脈波を測定し、上腕-足首間脈波伝播速度(Brachial ankle pulse wave velocity , baPWV)を測定しました。また、空腹時の静脈血を採取し、グリース法により血漿NOx濃度を測定しました。
- 結 果
- 錠剤の摂取率に群間で有意差は認められませんでした。baPWVは、プラセボ群では摂取前後に有意な差はありませんでしたが、クロレラ群では摂取後の値に有意な低下が見られました(P=0.04)(図1)。またクロレラ群においては、摂取前後におけるbaPWVの変化量と血漿NOx濃度の変化量との間に有意な相関関係が認められました(P=0.004)(図2)。
以上の結果より、中高齢者においても4週間のクロレラ摂取により動脈スティフネスが改善されること、その改善には血管内皮細胞による一酸化窒素産生量の増加が関連する可能性が示唆されました。