- 研究目的
- クロレラ水抽出物は抗酸化能力が低下したSod1変異体ショウジョウバエの寿命を延長し、その機能成分はモノアミンに分類されるフェネチルアミンであることを報告しています。しかし、フェネチルアミンが哺乳類でも抗酸化能力へ影響するかは不明でした。そこで、京都大学との共同研究を継続し、高脂肪食の摂取で肝臓に蓄積した脂質の酸化により病態が進展する「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」モデルマウスでクロレラ水抽出物およびフェネチルアミンの肝臓保護の作用機序を解明しましたのでご報告いたします。
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- 試験方法
- 60%高脂肪食飼育のNAFLDモデルマウスにクロレラ水抽出物を100 mg/kg (WEC群)またはフェネチルアミンを10 μg/kg (PHA群)を12週間経口投与しました。評価は血液で生化学的検査および肝臓で分子生物学的検査を実施し、結果を通常食(ND群)および60%高脂肪食(HFD群)のみで飼育したマウスと比較しました。有意な変動はp < 0.05で評価しました。
- 結 果
- 生化学的検査
肝臓障害の指標となるAST とALT がHFD 群と比べWEC 群、PHA 群は上昇の抑制を示し、PHA 群で有意でした。また、WEC 群とPHA 群でLDL-コレステロールが有意に上昇抑制を示し、ND 群と同等の値を示しました。(図1)
- 分子生物学的検査
肝臓で脂質の酸化により生成され、酸化ストレスの指標であり細胞毒性の強いマロンジアルデヒド(MDA)がHFD 群と比べWEC群とPHA群では上昇の抑制を示し、ND群と同等の値を示しました。そのため、脂質からMDAの酸化を促進し細胞毒性を示すメチルグリオキサール(MGO)を測定したところ、WEC群とPHA群で有意な低下が示されました。そこで、MGOの前駆体などの濃度を低下する可能性や脂肪肝の抗酸化能力を維持すると考えられるグリセルアルデヒド3 リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の量を測定したところ、ND群と比べてHFD群は大きく減少していましが、WEC群とPHA群で回復が示されました。(図2)
以上のことから、「高脂肪食誘発による肝障害に対しクロレラ水抽出物またはフェネチルアミンはGAPDH の量を回復し、その結果MGO やMDA の生成が抑制されることで肝臓保護に作用する」ことが作用機序として解明されました。