済生会奈良病院(奈良市)で行なわれた妊産婦を対象とした臨床試験において、妊娠期間中クロレラを摂取した妊産婦の母乳中のダイオキシン濃度が低下し、免疫グロブリンA濃度が増加することが確認されました。
- 母乳とダイオキシンについて
- 母乳は乳幼児にとって栄養学的に重要なだけではなく、免疫グロブリンA、ラクトフェリンおよびリゾチームなどの乳幼児の生体防御に関わる様々な成分を含んでいます。特に母乳中の免疫グロブリンAは、免疫機能の発達が十分ではない乳幼児の腸管で作用し細菌やウイルスなどの感染症にかかりにくくする作用があります。しかし、母乳から高濃度のダイオキシンが検出されたことから、母乳を摂取する乳幼児への健康影響が懸念され、日本国内においては母乳哺育の是非が大きな社会問題ともなりました。
- 研究目的
- 今回の臨床試験は、日本に在住する妊産婦の方に協力していただき、クロレラの飲用が母乳中のダイオキシン濃度や免疫グロブリンA濃度に与える影響を調べることを目的としました。
- 実験方法
- 35人の妊産婦に提供していただいた母乳と母体血について、ダイオキシン28異性体の測定を行ない、母乳を介した母親から乳児へのダイオキシン移行について調べました。また、妊産婦35人のうち18人の方に、妊娠12-16週から出産までの約6ヶ月間クロレラを1日30粒飲用していただき、母乳中のダイオキシン濃度や免疫グロブリンA濃度について、対照(クロレラを飲用しない)群との比較を行ないました。本研究は、「ヘルシンキ宣言」を遵守し済生会奈良病院治験審査委員会の承認のもとに行なわれました。
- 結 果
- 1.クロレラは母乳中のダイオキシン濃度を低下させた
- クロレラを摂取した群では、対照群と比較して母乳中のダイオキシン濃度が有意に低下することが示されました。この結果は、母親が妊娠期間中、食生活にクロレラを取り入れることにより、母乳を介したダイオキシンの母児間移行を低減させる可能性があることを示しています(図1)。
- 2.クロレラは母乳中の免疫グロブリンA濃度を増加させた
- クロレラを摂取した群では、対照群と比較して母乳中の免疫グロブリンA濃度が有意に増加することが示されました。母乳中の免疫グロブリンAの増加は、乳児に対して感染症罹患のリスクを低下させる等の効果が期待されます(図2)。
- 本研究の結果は、母親がその食生活にクロレラを取り入れることにより、母乳中のダイオキシン濃度が低下し、更に免疫グロブリンA濃度が増加するという乳幼児とって有益な効果が得られる可能性を示していると考えられます。また、クロレラを飲用した妊婦に副作用は認められませんでした。