この度、ラットを対象にクロレラの有効性を確認した試験の研究成果が、学術誌に掲載されましたので、ご報告いたします。
- 研究目的
- 我々はこれまでの予備的検討において、クロレラが各種の自律神経系の働きに影響を与えることを確認している。今回はそのなかでも皮膚動脈交感神経への作用に着目し、詳細な検討を行った。
- 試験方法
- 1) 皮膚動脈交感神経に対する効果の検討
体重約300gの雄性Wistar系ラット(約9週齢)にクロレラ粉末の水懸濁液(30mg/250ml)1ml を、カニューレを使用して十二指腸内に投与し、その際生じる皮膚動脈交感神経活動(CASNA)の変化を電気生理学的方法により測定した。対照群には水1ml を投与した。
- 2) 皮膚血流に対する影響の検討
体重約300gの雄性Wistar系ラット(約9週齢)にクロレラ粉末の水懸濁液(30mg/250ml)1ml を、カニューレを使用して十二指腸内に投与し、尻尾皮膚の血流量(Blood Flow)の変化はレーザー血流計(ALF21、アドバンス社製)を用いて測定した。対照群には水1ml を投与した。
- 3) 経皮水分蒸散量に対する影響の検討
体重約300gの雄性HWY hairlessラット(約8週齢)の背部2カ所(脊柱を中心にして対称となる部位)の保湿度の変化を測定した。保湿度の指標として皮膚の水分蒸散量(経皮水分蒸散量、transepidermal water loss、TEWL)をVapo Meter(Delfin Technologies Ltd., Kuopio, Finland)を用いて測定した。クロレラ投与群は自律神経活動測定実験に用いて効果のあった濃度のクロレラ水懸濁液 (30mg/250ml)を唯一の飲料水として自由摂取させた。対照実験としては水を自由摂取させた。
- 結 果
- 試験の結果、クロレラ粉末のラット十二指腸への投与は皮膚動脈交感神経活動を有意に抑制することが確認された(グラフ1)。皮膚動脈交感神経活動を抑制する物質は、皮膚動脈の血流を増加させ、皮膚の保湿作用を高めることが報告されている。そこで実際にラットの皮膚血流と経皮水分蒸散量にクロレラ投与が与える影響を測定したところ、皮膚の血流量が有意に増加し、さらに経皮水分蒸散量が有意に抑制されることが確認された(グラフ2 およびグラフ3)。また、これらの作用はヒスタミンH3 受容体阻害剤であるthioperamide maleate の投与により消失することも確認された。
以上の結果、クロレラは自律神経である皮膚動脈交感神経の制御を介し、皮膚への血流量を増大、皮膚への酸素と栄養素の供給を促進して、皮膚の保湿度を上昇させるといった生理機能変化を起こすことが確認された。
また、これらのクロレラの効果には,脳内ヒスタミン神経系や体内時計の存在するSCN が関与することを示唆する結果も得られた。