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健康素材の研究レポート 一覧

サン・クロレラ研究開発部が健康素材の試験や分析した結果を報告しています。

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【学術情報】

2024年1月(株)サン・クロレラ研究開発部

クロレラとホヤプラズマローゲンの併用による認知症予防効果 学術誌「Molecules Vol.29」に掲載(インパクトファクター4.6)

Molecules, VOL.29 (2024) に掲載

研究目的
認知症の増加は国内だけではなく世界的な社会問題となっています。世界の認知症者数は2019年において約5,700 万人と推計されています。日本国内においては65歳以上の認知症者数は2020年現在で約600万人、これが2040年には約800万人に増加すると予測されており、認知症拡大の抑制への取組みが一層重要視され、薬剤の開発とともに日常的に摂取できる食品やその成分の利用による予防法の開発が期待されています。
日本の認知症者のうち65~70%がアルツハイマー型認知症であるとされ、アルツハイマー型認知症の原因の一つとして、脳に存在するリン脂質の一種であるプラズマローゲンが注目されています。ヒトの脳は極めて脂質に富んだ組織であり、乾燥重量の約8%をエタノールアミン型プラズマローゲンが占めています。プラズマローゲンは、神経細胞の細胞膜を構成する成分であり、脳の情報交換と伝達等に関与しており、アルツハイマー病患者の脳ではプラズマローゲンが低下していることが知られています。
原索動物であるホヤは進化の系統上、脊椎動物に近く、ヒトの脳に多いDHA( ドコサヘキサエン酸)を持つプラズマローゲンを多く含有しています。ホヤプラズマローゲンについては、神経芽細胞のアポトーシス抑制作用、アミロイドβ凝集抑制作用、認知機能改善作用が報告されています。クロレラは、ヒトの赤血球の主要な抗酸化成分であるルテインを他の食品に比べて非常に多く含有しています。中高年者を対象とした飲用試験では、クロレラの摂取により赤血球中の過酸化リン脂質が低下(老化赤血球の増加を抑制)し、脳組織への酸素の供給を改善し認知症予防に有用である可能性が示されています。
本試験では、認知症予防に有用な食品であるホヤプラズマローゲンとクロレラの両者の併用による認知機能に対する効果を検証しました。
試験方法
6週齢の雄ラットを、対照群(Con;サラダ油+普通飼料)、クロレラ群(CHL;サラダ油+クロレラ配合飼料) 、ホヤエキス群( HRE;ホヤエキス+普通飼料) 、併用群(CHL+HRE;ホヤエキス+クロレラ配合飼料)の4 群(各群5匹)に分け試験を実施しました。ホヤエキス(ホヤプラズマローゲン0.07mg/日)は1週間毎日1回投与し、クロレラは、クロレラ1%配合飼料(クロレラ粉末200mg/日)として1 週間摂取させました。1週間の投与後、学習や記憶に関与する海馬における脳由来神経栄養因子(BDNF)シグナル伝達系(BDNF-TrkB-CREB シグナル伝達系)※の活性化を測定しました。
 結   果
海馬BDNFの発現量は、Con群と比較して、CHL群、HRE群では有意差は認められませんでしたが、HL+HRE群では増加傾向(p=0.078)を示し、各々の単独投与群と比較して有意な増加を示しました(図1A)。さらに、CHL+HRE群では、Con群と比較してBDNFの特異的受容体であるTrkBの活性化が有意に増加しました(図1B)。それに続くCREB の活性化についても、CHL+HRE群では、Con群、CHL群、HRE群と比較して有意な増加を示しました(図1C)。
図1.クロレラ、ホヤエキスおよび両者の併用による海馬BDNF シグナル伝達系への影響
海馬におけるBDNF発現、TrkB活性化、CREB活性化をウェスタンブロット法により測定。BDNF発現、TrkB活性化およびCREB活性化は対照群(Con)に対する比で示しています。
グラフは平均値±標準誤差(各群5匹)、*p<0.05 を有意としました。
Con、対照群;CHL、クロレラ群(クロレラ粉末200mg/日を投与);HRE、ホヤエキス群(ホヤプラズマローゲン0.07mg/日を投与);CHL+HRE、併用群(クロレラ粉末200mg/日+ホヤプラズマローゲン0.07mg/日を投与)。
本試験の結果、単独投与では効果が認められない投与量において、1週間という比較的短い投与期間にもかかわらず、クロレラとホヤプラズマローゲンを併用することによりBDNF-TrkB-CREBシグナル伝達系が活性化されることが確認されました。クロレラとホヤプラズマローゲンを併用することでBDNFシグナル伝達系の活性化が促進されること、さらに両者は異なるメカニズムによる認知機能の改善効果が期待されることから、両者の併用により
相乗的な認知症予防効果が発揮される可能性が示されました。

用語説明

*: 脳由来神経栄養因子(BDNF)シグナル伝達系(BDNF-TrkB-CREB シグナル伝達系)
脳由来神経栄養因子(BDNF)は学習や記憶において重要な働きをする神経栄養因子(ニューロトロフィン)であり、BDNFが神経細胞の発生、成長、修復に作用する機構の中で最も有力なのは、細胞表面上にある特異的受容体であるトロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)に結合し、転写因子であるcAMP応答配列結合タンパク質(CREB)を介する経路(BDNF-TrkB-CREBシグナル伝達系)(下図参照)。アルツハイマー病患者の脳では、BDNF発現量が低値であることが知られ、BDNF、TrkB、CREBの発現量を調べることは、アルツハイマー病の進行を評価する基準として有用であると考えられています。
図.BDNFシグナル伝達系による神経細胞の発生、成長、維持および修復
BDNF、脳由来神経栄養因子;TrkB、トロポミオシン受容体キナーゼB;CREB、cAMP応答配列結合タンパク質;MAPK、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ;PI3K/Akt、ホスファチジルイノシトール3‐キナーゼ/プロテインキナーゼB;PLC‐γ、ホスホリパーゼCγ

 詳   細 

掲 載 誌:
Molecules, VOL.29 (2024)
タイトル:
Simultaneous Intake of Chlorella and Ascidian Ethanolamine Plasmalogen Accelerates Activation of BDNF‐TrkB‐CREB Signaling in Rats
著  者:
Hideo Takekoshi1), Masaki Fujishima1), Taiki Miyazawa2), Ohki Higuchi2,3), Takahiko Fujikawa4), Teruo Miyazawa2)
所  属:
1) Sun Chlorella Corp., 2) New Industry Creation Hatchery Center (NICHe), 3) Biodynamic Plant Institute Co., Ltd., 4) Suzuka University of Medical Science

PDF版 378KB

※この情報は、学術雑誌や学会において発表された内容の掲載であり、商品の販売促進を目的とするものではありません。

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