現代人は、一生を通じて様々なストレスにさらされています。ストレスの蓄積は、胃潰瘍、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病、うつ病に代表される心の病気などを発症させる大きな要因になるばかりでなく、突然死や過労死の引き金になるとさえいわれています。ストレス社会に生きる私たちにとって、ストレスの症状さらにはストレスがもたらす疾患を軽減することは、健康な生活を送る助けとなるでしょう。
- 研究目的
- エゾウコギの抗疲労・抗ストレス作用は、過去に我々が行った強制遊泳させたマウスの試験で明らかになっています(詳しい内容は、「実験動物におけるエゾウコギ根抽出物の機能性」(2004年日本栄養・食糧学会誌掲載)をご覧ください)。そこで、本研究では、エゾウコギエキス含有飲料のヒトに対する抗ストレス効果について検証しました。
- 実験方法
- ストレスの自覚感を持つ20歳から55歳の一般男性32名のなかから、日常的なストレスの自覚を心理的に評価するGHQ1)によって被験者22名を選び、エゾウコギエキス含有飲料群11名と、エゾウコギエキスが含まれていないプラセボ群11名に分けました。
被験者には、それぞれの飲料を飲んでもらい、飲用1時間後から、3つのストレス負荷テスト(新ストループ検査Ⅱ2)、Raven’s matrix検査3)、内田クレペリン検査4))を行いました。
飲用前とテスト終了直後、テスト終了30分後に、POMS6)によるアンケートで心理的ストレスを測定し、それぞれの結果を、エゾウコギエキス含有飲料群とプラセボ飲料群で比較しました。
また、飲用前とテスト期間中の30分毎に唾液を採取し、唾液中のストレスマーカー5)を測定しました。
- 結 果
- エゾウコギエキス含有飲料の単回飲用により、以下のような作用が確認されました。
- 1)POMSの「不安-緊張」得点がプラセボ群と比べて統計学的に有意に軽減し(図1)、その効果は日常的なストレス自覚が高めの被験者に対してより効果的であることが示唆されました。
- 2)3つのストレス負荷テストの正解率に関して、Raven’s matrix検査ではプラセボ群と比べて統計学的に有意に高い値を示し、内田クレペリン検査では高くなる傾向がみられ、ストレスによって起こる認知判断および正確さの低下を抑える可能性が示されました。
- 以上の結果から、エゾウコギエキス含有飲料は、ヒトに対するストレス軽減効果を有する可能性が示され、その効果は日常的なストレス自覚が高めの被験者に対してより効果的であることが示唆されました。