- 研究目的
- 炎症は、本来微生物などから身を守る生体防御のためのものですが、慢性化した炎症反応はリウマチなどに関与していることが知られています。我々は、これまでin vitroにおいて、クロレラが抗炎症作用を有する可能性を明らかにしています。(詳しい内容は、「クロレラ粉末が有する薬理作用の検索について」(第61回日本栄養・食糧学会発表)をご覧ください)。そこで、本研究では、生体におけるクロレラの抗炎症作用について、慢性炎症のアジュバント関節炎と、急性炎症のカラゲニン浮腫の2つのモデル動物を用いて検証しました。
1.アジュバント関節炎モデル1)
- 実験方法
- ラットを以下の5つのグループに分け、起炎剤による足容積増加の程度を、28日間クロレラ粉末を与えた群と、抗炎症薬を与えた群で比較しました。また、試験最終日には、足関節の破壊の程度をスコア化して評価2)し、血清サイトカインIL-1β3)を測定しました。
- 1.対照群:起炎剤の注射のみ
- 2.抗炎症薬群:起炎剤注射後、抗炎症薬デキサメタゾンを5日間、1日1回経口投与
- 3.クロレラ1g/kg投与群:起炎剤注射、*
- 4.クロレラ0.5g/kg投与群:起炎剤注射、*
- *クロレラ粉末は、起炎剤を注射する7日前から注射後21日までの計28日間、1日1回経口投与しました。
- 5.正常群:無処置
- 結 果
- クロレラ粉末の連続摂取により、アジュバント関節炎モデルにおける足容積の増加を、抗炎症薬ほどではないものの統計学的に有意に抑制しました(図1)。また足関節の破壊(図2)、血清サイトカインIL-1βの上昇(図3)も、抗炎症薬ほどではないものの抑える傾向を示し、クロレラ粉末を連続して摂取することで、炎症の発症抑制に効果があることが示唆されました。
2.カラゲニン浮腫モデル4)
- 実験方法
- ラットを以下の4つのグループに分け、起炎剤による足浮腫の程度を、7日間クロレラを与えた群と、抗炎症薬を与えた群で比較しました。
- 1.対照群:起炎剤の注射のみ
- 2.抗炎症薬群:起炎剤注射前日に、抗炎症薬インドメタシンを単回経口投与
- 3.クロレラ1g/kg投与群:起炎剤注射、*
- 4.クロレラ0.5g/kg投与群:起炎剤注射、*
- *クロレラ粉末は、起炎剤を注射する7日前から1日1回経口投与しました。
- 結 果
- クロレラ粉末の連続摂取により、カラゲニン浮腫モデルにおける足浮腫を、抗炎症薬ほどではないものの抑制する傾向がみられました(図4)。
- 図
3.まとめ
1.足の腫れを統計学的に有意に抑制しました。
2.足関節の破壊を抑制する傾向がみられました。
3.血清IL-1βの増加を抑制する傾向がみられました。
以上の結果から、クロレラ粉末を連続して摂取することで、慢性及び急性炎症の発症抑制に効果がある可能性が示唆されました。