公開日:2013-05-13
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微小粒子状物質(PM2.5)に汚染された大気中で長く生活していると、動脈硬化が進み、結果的に脳卒中や心筋梗塞などの循環器病のリスクを高める可能性がある、という米国ミシガン大学からの研究報告が、『科学公共図書館報:医学』誌に発表された。
動脈硬化とは、文字通り動脈が硬く肥厚する状態をいう。動脈硬化が進行すると血液が流れにくくなり、最終的には目詰まりを起こして血液の循環を遮断し、脳卒中(脳梗塞)や心筋梗塞などの循環器病に至る。循環器病は、世界中で主要な死因のひとつになっている。 |
動脈硬化のリスクを高めるものとしてはすでに、喫煙、高血圧、高コレステロール、肥満、糖尿病などさまざまなものが知られているが、PM2.5も候補のひとつに加わることになったというわけである。
M2.5とは、大気中に浮遊している2.5ミクロン以下のきわめて小さな粒子(1ミクロンは1ミリの千分の一)のことである。有害な大気汚染物質が粒子状化したもので、髪の毛の太さの30分の1しかないため、容易に肺から体内に侵入し、動脈硬化を促進して循環器病のリスクを高めるのではないかと疑われていた。
今回、ミシガン大学のサラ・アダール助教授らの研究チームは、環境中のPM2.5濃度と住人の頚動脈壁の肥厚の速度に相関関係があることを明らかにした。頚動脈は、頭に酸素や栄養素を届ける重要な血管のひとつである。頚動脈壁の肥厚は、全身の動脈硬化の目安とされる。 研究チームは、2000年に始まった動脈硬化に関する大規模な疫学調査において、六大都市圏(シカゴ、ロサンジェルス、マンハッタンなど)に在住の中高齢者、約5,400名を対象に2000年と2005年の間に約3年の間隔をおいて2回、超音波計を用いて頚動脈の厚み(内中膜複合体厚)の測定を行った。大気中のPM2.5濃度は、米国環境省のデータを使用した。 |
得られたデータを解析した結果、参加者全員の頚動脈の厚さは、年平均14ミクロンずつ増加していることがわかったが、特にPM2.5濃度の高い汚染地域の住民は、ほかの地域の住人に比べて、年平均5ミクロンも多く肥厚することがわかったという。
また、大気汚染が減少すると血管壁の肥厚が遅くなることも明らかにされた。
「今回のデータを、同じ調査の別の推計データとリンクさせると、PM2.5濃度の特に高い汚染地域の住民は、同じ大都市圏の汚染の少ない地域の住民に比べて、脳卒中のリスクが2パーセント高まることが示唆されます」とアダール助教授は述べている。
「調査は今後10年間続くので、将来そこから得られる結果によって、PM2.5による大気汚染と脳卒中のような循環器病との長期にわたる関係がより明確になるものと期待されます。」
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