公開日:2023-05-26
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長期介護施設の高齢入居者が健康を維持するためには、食事を改善する必要がありそうだ、というカナダ・ウォータールー大学のAI(人工知能)技術を用いた研究結果が『BMC公衆衛生』誌に発表された。
入居者の食事は、全粒穀物、植物性たんぱく質、新鮮な果実と野菜をより多く食べることで、国の食事摂取ガイドラインに適ったものになり、それが炎症リスクを減少させる助けになるという。
研究チームは、本研究のために新たに開発したAIツールを用いて、カナダ国内32カ所の高齢者長期介護施設から600人を超える入居者の3日間にわたるすべての食事と飲料摂取のデータを収集・解析した。各食品がどれくらい体内炎症を起こし易いか、既存の「食事性炎症指数」を用いて算出し、それを入居者の性別、食事内容、栄養状態別に評価・解析した。 |
解析結果は、カナダの食事摂取ガイドラインである、2019年版カナダ食品ガイドの推奨事項に照らし合わせて検討された。このガイドラインには、糖尿病、心血管疾患、関節炎、認知症など慢性疾患の原因となる体内炎症を減らすための健康に良い食事の摂り方が書かれている。
「この食品分析は、介護施設の食事計画をサポートし、健康改善とQOL(生活の質)向上をサポートするための貴重な洞察を与えてくれるものです」と筆頭研究者のケイレン・プフィステラー博士は述べている。
今回研究チームは、介護施設の食事の質について改善の余地があることを明らかにしたが、現実に介護施設の食事を変えるためにはいくつかの課題が存在することも認めている。
そのひとつは、高齢者が楽しみながら摂れるような食事にすることができるかということである。楽しめなくても健康は改善されるかもしれないが、それでは入居者のQOLを大きく損なうことになりかねない。 もうひとつは、介護施設入居者の多くが栄養不良(欠乏)のリスクを抱えており、十分なカロリーを摂取してもらうこと自体が単純に難しい可能性が高い。つまり食事をすること自体に困難が存在するのである。もちろん、そこには予算上の制約や、季節によって特定の食品を手に入れるのが難しいといったことも影響する可能性が高い。 本研究の特徴として、今回新たに研究チームによって開発されたAIツールの存在が挙げられる。このAIツールは、大量の食事データの解析という、多くのバイアス(歪み)やエラー(間違い)の元になりやすい、時間も手間もかかる作業を効率的に自動化するものである。 |
「このような大規模な集計作業がAIによって自動化されることで、より詳細な分析が可能になり、現在介護施設で摂取されている食事の炎症可能性について、より深く、より包括的な洞察を得ることができました」と共同研究者のアレクサンダー・ウォン教授はコメントしている。
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