公開日:2017-06-19
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米国で現在使われている、健康な成人のためのたんぱく質の推奨栄養所要量(RDA)は、約15年前に決められたものだが、その後の研究の進展によって、高齢者には充分といえなくなっているようだ。カナダ・マクマスター大学からの研究報告。
米国の加工食品の栄養表示には、1日の推奨栄養所要量に対する割合をパーセント表示することが義務付けられている。このとき食品業者が参照するのは、米国医学研究の食品栄養委員会が決めたRDAガイドラインである。これは各々の栄養素について、年齢性別に応じて1日当たりの最低必要量を規定したものであり、健康な者の97.5%に適合するように設定されている。
食品ラベルの計算には、1968年に決められたRDAがそのまま使われているが、栄養士や栄養学の研究者は2003年に決められたより新しいRDAを参照している。だが、今回の最新レビューによれば、どちらのRDAでも、高齢者や重病人のためのたんぱく質推奨量は適切とはいえないことがわかったという。 |
「大きな間違いが放置され続けています。1日に体重1kg当たり0.8gのたんぱく質というのは、高齢者と病気の人にとっては充分ではないのです。これを“所要量”とか“推奨された”などというべきではありません」と著者のスチュアート・フィリップス教授は語っている。
今回のレビューの中で、教授はRDAを策定する時やたんぱく質の補給を推奨する時には、同時にたんぱく質の種類についても考慮すべきであることを指摘している。特に、たんぱく質を構成するアミノ酸のひとつであるロイシンに着目している。高齢者は筋肉を作るために特にこのロイシンを必要とする割合が高い。牛乳やチーズがその良好な供給源になるだろうと教授はいう。
たんぱく質の摂取量を増やすことは、急速に除脂肪体重(体重から脂肪を引いた重量で、筋肉量の目安になる)が減少する重病人にとっても極めて有益であるという。高齢の重病人には最高に有益であることになる。「私たちは、高齢者を対象とした臨床試験によって、より長期にわたってたんぱく質の摂取量を増やした場合の効果を検証する必要があるのは明白だと私は考えています。効果を明らかにするためには400-500人の参加者が必要でしょう」と教授は語っている。
これまでにも現在のたんぱく質のRDAに異議を唱える研究者はいたが、広く受け入れられるものとはならなかった。教授は、彼のメッセージがひとりでも多くの人に届くように、オープンアクセス(全ての人が無料で読めるオンライン形式)という出版形態を選んだという。「私は全ての人が読める論文を出版するのが好きです。大学や研究機関の限られた人間だけが論文を読めた時代は過去のものです。私は、研究者だけでなく全ての人が私たちの論文を読めることが重要だと考えています。」 夕食の時も、フィリップス教授はたんぱく質に注目するという。「でも他の栄養素を蔑ろにしたりはしません。私は食品の多様性を楽しんでいます。糖分や精製炭水化物の摂り過ぎに注意するくらいです。もちろん、たんぱく質は、私の食事計画の大きな部分を占めています。」 |
(参考:日本では、「日本人の食事摂取基準2015年版」において、70歳以上の1日あたりのたんぱく質推奨量は男性で60g(参照体重60kg)、女性50g(参照体重50kg)となっている。また欧米の多くの国とは異なり、日本人の食事摂取基準は常に5年ごとに見直されて、最新の科学的根拠が反映されるようになっている。)
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