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公開日:2015-04-17

高脂肪食による行動変化は、腸内細菌が脳に炎症を起こすから?

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脂肪の多い食事はあなたの行動や脳そのものに変化を及ぼすのだろうか。米国ルイジアナ州立大学の研究グループは、食事中の脂肪が腸内細菌に作用して、それが脳にまで影響を及ぼすという研究結果を『生物精神医学』誌に発表した。

脂肪の多い食事が、心臓病や脳卒中などのさまざまな病気のリスクを高めることは以前から良く知られている。けれども最近になって、高脂肪食にはうつ病などの精神疾患のリスクもまた高めるのではないかという関心が高まってきた。

今回発表された報告では、脂肪の多い食事が健康と行動に影響を与える原因のひとつとして、私たちの腸内細菌の構成が脂肪によって変化し、それが脳神経系に影響を及ぼす可能性が指摘されている。

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人間の体内には100兆個もの微生物が生息しているといわれており、その多くが腸の中にいて、いわゆる「腸内細菌叢」を構成している。腸内細菌は、実は私たちの身体に寄与する様々な機能を受け持っているので、それが悪い方向に変化すれば、私たち自身が、脳神経系も含めた病気にかかりやすくなったりする危険性が高まる。

研究グループは、肥満の病態を研究していく中で、脳や行動の変化には、肥満そのものではなく、肥満がもたらした腸内細菌叢の変化に重要なカギがあると考え、マウスを用いた動物実験を行ったという。通常のエサで育てられた肥満していないマウスに対して、高脂肪食で育てられた肥満マウスの腸内細菌叢が移植され、その行動や脳機能に及ぼす影響が調べられた。

1429241534 その結果、肥満マウスの腸内細菌を移植されたマウスは、不安行動、記憶障害、反復行動など複数の行動異常がみられるようになったという。それだけでなく、身体的な異常も現れた。腸管壁の透過性が亢進して腸内細菌の内毒素が血液中に流れ出し、それに反応したリンパ球の炎症反応を示す検査値が上昇した。脳内の炎症反応も上昇しており、行動異常への関与をうかがわせた。

「この論文が示唆しているのは、脂肪の多い食事は脳の健康を損なうようだ、ということであり、それが人間とその腸内に住む微生物の共生的な関係を破壊することに起因する、ということである」と『生物精神医学』誌編集長のジョン・クリスタル博士はコメントしている。

実際、今回の研究で行われているのは、腸内細菌の移植だけであり、対象のマウス自身は高脂肪食を食べていず、肥満もしていなかった。つまり高脂肪食によって変化した腸内細菌叢だけあれば肥満しなくても脳の変化を引き起こすのに十分だということである。これは、様々な精神障害者において消化器症状の存在を指摘している多くの先行研究の結果とも一致するという。

ただ、どうして腸内細菌叢が変化するだけで行動まで変化させることができるのか、炎症反応だけで説明できるものなのか、詳細については未だに不明の部分が多い。今後の研究がまたれるところだが、腸内細菌叢自体が神経精神疾患の治療のターゲットとしての可能性を秘めていることは、現時点でも言えるだろうと研究チームはまとめている。

出典は『生物精神医学』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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