健康食品を科学的に考察する情報サイト

サン・クロレラ 研究サイトSUNCHLORELLA LAB

健康食品を科学的に考察する情報サイト

世界の最新健康ニュース

時々の健康にかかわるニュースや最新の話題をお届けします。

世界の最新健康ニュース

公開日:2022-10-24

食物繊維が皮膚アレルギーを改善する助けになる

世界の最新健康・栄養ニュース

腸内細菌による食物繊維の発酵が、アトピーなどアレルギー性皮膚炎からの予防・改善に役立つようだ、という研究成果が『粘膜免疫学』誌に発表された。この研究は、腸と皮膚をつなぐ代謝軸(分子のハイウェイ)の存在を示唆するものであり、新たなアレルギーの予防法や治療法の開発につながる可能性があるという。

豪州モナシュ大学のベン・マースランド教授らはスイス・ローザンヌ大学病院の研究者らと共同で腸と皮膚をつなぐメカニズムについて検討した。そして、腸内細菌による食物繊維の発酵によって酪酸などの短鎖脂肪酸(SCFA)が作られ、それがアトピー性皮膚炎を予防することを、マウスを用いた動物実験で証明した。

腸内の細菌叢が免疫系に深く関与していることは良く知られている。だが、それが皮膚にまで及んでいるかどうかは、はっきりしていなかった。

「これまでの研究では、肺や心血管系におけるSCFAの健康効果に焦点が当てられてきました」とマースランド教授は述べている。「私たちは、それを皮膚まで拡張したらどうだろう、それはいままでほとんど研究されていないじゃないか、と考えたのです。人々は、食事が皮膚の健康にも影響していると漠然と考えていますが、これを裏付ける根拠は実はそれほど多くなかったのです。」

研究チームは、発酵性の食物繊維または純粋なSCFAをマウスのエサに添加した。「そのエサを食べると、アレルギー性皮膚炎が顕著に予防されることがわかりました」とマースランド教授は述べている。

放射性同位体で標識した酪酸を用いて、それがマウスの体内でどのように代謝されていくのかを調べたところ、食べてからわずか数分で皮膚に到達することが明らかになった。そして、ケラチノサイトの代謝が促進され、健康な皮膚の防御層を形成するカギとなる構造物が作り出されたという。

「これによって、アレルゲン(アレルギーを惹起する物質)に対する皮膚バリア機能が強化されることがわかりました。私たちはイエダニのアレルゲンを用いて実験を行いましたが、それは通常ならば容易に皮膚バリアを透過して免疫系を活性化し、アレルギー反応を引き起こす量でした」と教授は説明している。「免疫系に対する効果は、この皮膚バリア機能の強化の結果として起きた二次的なものだったのです。」

「皮膚バリア機能の改善が、アレルギーやその他の病気を起こす環境中のアレルゲンへの曝露に対する保護効果をもたらします。酪酸などのSCFAは、食べてもいいですが、皮膚にクリームの形で直接塗布しても有効でしょう」と教授は述べている。「SCFAを外用剤として適用できる可能性があることを実証できたことが、本研究の最も有意義な点ではないかと考えています。」

「この発見が、子供たちが皮膚アレルギーを皮切りにさまざまな食物アレルギーやぜんそくを発症していく、いわゆる『アトピーマーチ』として知られる症状を抑える助けになるかどうかを検証していくことは、今後探求する意義のあるひとつの可能性だと思います」とマースランド教授はコメントしている。

出典は『粘膜免疫学

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
関連記事
  • Google Bookmarks Google Bookmarks
  • はてなブックマーク はてなブックマーク