手軽にできる「治療食」によって、薬を服用できない患者でも、血清コレステロール値を服薬と同じくらい効果的に低下できる、という研究結果が発表された。

高コレステロール血症は、心血管疾患の主要なリスク因子であり、医師は、その治療のためにスタチンなどの処方薬の服用を勧めるが、今回の研究結果は、効果的な食事ベースの代替治療を提供するものになる可能性がある。これはスタチンなどの副作用に苦しむ患者にとっては、うれしい知らせであるだろう。 この画期的な研究成果によれば、「治療食」はコレステロール低下薬と同じくらい効果的であるだけでなく、そのために思い切ったライフスタイルの変革をする必要もないのである。

「私たちのアプローチは、多くの医師や患者がオプションのひとつとして容易に選択することが可能なものです」と筆頭研究者のスティーブン・コペッキー医師は語っている。「多くの患者が、スタチンを服用することを望まず、また副作用で服用できないので、現実的な食事療法は大いに彼らの助けになるはずです。」

今回、米国メイヨークリニックが主導する研究チームは、「ステップワン食品」と呼ばれる食品を、1日2回、従来の食事の一部に代えて摂取するだけで、LDL-コレステロール値を、顕著にかつ速やかに下げられることを実証した。LDL-コレステロールは、悪玉コレステロールとも呼ばれ、心血管疾患の原因になる動脈硬化を促進することが知られている。

研究チームは、男性18名と女性36名の参加者（平均年齢49歳）を対象に、ランダム化二重盲検自由生活クロスオーバー介入試験を実施した。参加者の開始時の平均LDL-コレステロール値は131mg/dlだった。

食事介入は、「ステップワン食品」コースと「大手スーパー食品」コースの2種類が用意され、各々4週間ずつ実施し、間に前の食事の影響を除くための4週間の洗い出し期間が設けられた。参加者は、最初ランダムにいずれかの食事コースに振り分けられ、その後もうひとつの食事コースを実施した。一般に介入試験では、全ての食事が研究施設で提供される完全管理型のものが多いが、今回の試験では、参加者は日常生活の中で食事の一部を変更するだけだった。

「ステップワン食品」コースでは、参加者はステップワン食品から選ばれたホールフード（自然食品）で作ったスナックの組み合わせを、普段の食事の一部に代えて摂取した。スナックはすべて、チョコバーやストロベリーバナナスムージーなど、コレステロールを下げることが期待できる自然の食材から作られたものであり、一定量の食物繊維、植物ステロール、オメガ-3系脂肪酸、抗酸化物質が含まれていた。 対照の「大手スーパー食品」コースでは、参加者は、一般的な大手スーパーマーケットで販売されているスナックの組み合わせを、普段の食事の一部に代えて摂取した。 どちらのスナックもトータルのカロリーが同じになるよう調整されたが、成分はもちろんまったく異なっていた。 試験の結果、「ステップワン食品」コースを摂取した参加者は、30日以内に、LDL-コレステロールが平均9％低下し、中には30%低下した者もいたという。「大手スーパー食品」コースでは、30日たってもLDL-コレステロールの低下は観察されなかった。

「栄養は、心臓病の変更可能な7つのリスク因子のうちの実に5つに関係していますが、食生活を変えることはだれにとっても容易ならざる事業です」と共著者でステップワンフーズ社創業者のエリザベス・クロダス医師は語っている。「本研究は、食事療法がうまくいけば何が可能なのかを示しています。小さな食品ベースの介入によって、顕著にコレステロールに影響を及ぼせることの意義は大きいと思います。たったひと月で全国民の健康を変えることだってできるでしょう。」

■ステップワン食品について
ステップワン食品は、1日2回の摂取で、LDL-コレステロールを低下させるのに役立つ食品から構成されている。すべての食品が、コレステロールに良い影響を及ぼすことが知られているホールフード（クルミ、アーモンド、アマニ、チア、ベリー類など）から作られており、1食ごとに一定量の栄養成分（食物繊維、オメガ-3系脂肪酸、植物ステロール、抗酸化物質）が摂れるように調整されている。