健康食品を科学的に考察する情報サイト

サン・クロレラ 研究サイトSUNCHLORELLA LAB

健康食品を科学的に考察する情報サイト

世界の最新健康ニュース

時々の健康にかかわるニュースや最新の話題をお届けします。

世界の最新健康ニュース

公開日:2023-10-31

重度の飲酒は内臓周囲の脂肪を増加させる

世界の最新健康・栄養ニュース

過剰な飲酒は、内臓脂肪を増やすだろうか? 米国ウェイクフォレスト大学の研究者らによれば、答えはイエスであるようだ。研究チームは、重度の飲酒が、心臓、肝臓、腸といった内臓の周囲に付着する異所性の体脂肪、いわゆる内臓脂肪を増加させることを明らかにした。

「私たちの研究結果は、過剰なアルコールの摂取が心臓の健康に良くないことを示しています」と筆頭研究者のリチャード・カジブウェ医師は述べている。「心臓周囲の脂肪は、心血管疾患のリスクを高めることが知られているので、私たちは飲酒が、そのリスクにどう関与しているかを知ろうとしたのです。」

「多民族動脈硬化研究(MESA)」は、心血管疾患の臨床症状が現れる前に、どのようなリスクが進行するのかを明らかにするために1999年に開始された大規模疫学研究である。米国NIHの一部である国立心臓・肺臓・血液研究所(NHLBI)からの研究費によって、6,500人以上の欧州系、アフリカ系、ヒスパニック系、およびアジア系米国人(45-84歳)を対象に調査が進められている。

参加者は、研究開始時にそれまでの飲酒歴についてアンケートの次の項目の中から選択した。

・生まれてからずっと禁酒している
・以前は飲酒していたが今は禁酒している
・軽度に飲酒する(1日1ドリンク未満)
・適度に飲酒する(1日1-2ドリンク)
・重度(大量)に飲酒する(1日2ドリンク以上)
・過激(ビンジ)に飲酒する(飲むときはいつも1日5ドリンク以上で、軽度~重度に飲酒することはない)

一部の参加者を対象にCT(コンピューター断層撮影)画像診断が実施され、体脂肪が心臓や肝臓の周囲にどれくらい蓄積しているかが確認された。

「CT画像診断によって、体内の奥深くまで見ることが可能になり、脂肪の体内分布についての理解が進みました。体脂肪の分布は、BMI(肥満指数)のような古典的な肥満の指標ではわからなかったレベルで、肥満が心血管疾患のリスクに及ぼす個人ごとの影響の違いを浮き彫りにすることができます。たとえば、私たちは、BMIがほとんど同じ二人の肥満者でも、体脂肪の分布の違いから、心血管疾患のリスクが異なることを明らかにできるのです」とカジブウェ医師は述べている。

研究チームは、重度または過激な飲酒においては、禁酒者と比較して、心臓周囲の脂肪が統計的に有意に多いことを発見した。肝臓周囲の脂肪についても同様であった。

「興味深いことは、軽度および適度の飲酒者は、禁酒者と比べても、内臓まわりの脂肪が最も少なかったことです」とカジブウェ医師は述べている。

ビールやウイスキー、ジン、ウォッカなどのリキュール類と比べて、ワインには、心臓周囲の脂肪を増加させる効果が低いことも明らかになった。その理由として、カジブウェ医師は、ワインには身体によい化合物であるポリフェノールが多量に含まれているからではないか、と考察している。

「それとも、食事や運動のような別のファクターが関与している可能性もあります」とカジブウェ医師は言う。「ワインの愛好者には、健康に気をつかい、より健康的な生活習慣を心がける人が、非ワイン愛好者に比べて多いと思われるからです。」

「全体的にみると、飲酒量と内臓脂肪量の関係は、飲酒の健康リスクとして一般に知られているのと同じく、J字型であるようです。つまり、全く飲まないよりも少量の飲酒で最も脂肪量が少なくなり、その後飲酒量の増加に伴って脂肪量が増えていくというパターンです。」

カジブウェ医師は、多くの先行研究において、軽度から適度の飲酒で心血管疾患のリスクが最小になり、過剰な飲酒ではリスクが高くなるという、飲酒と心血管疾患リスクのJ字型の関係が報告されている、と述べている。

「こうした知見は、過剰な飲酒も過剰な内臓脂肪も、共に心血管疾患のリスク因子であることから重要です」とカジブウェ医師は言う。「それはまた、過度の飲酒によって引き起こされる健康上の懸念が十分に裏付けられているということであり、したがって人々にこれらの潜在的なリスクを認識してもらうことが重要であるということです。」

「これらの発見は、飲酒と心血管リスクとの関係をさらに確固たるものにし、過剰な飲酒に関連する特定の潜在性疾患に光を当てます」とNHLBIの遺伝疫学者でプログラム責任者のキャッシェル・ジャキッシュ博士は述べている。「ただし、飲酒と心血管疾患との関係における内臓周囲への脂肪の分布の役割をさらに明らかにするには、追加の研究が必要です。」

出典は『Journal of the American Heart Association

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
関連記事
  • Google Bookmarks Google Bookmarks
  • はてなブックマーク はてなブックマーク