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公開日:2013-09-27

腸内細菌がわたしたちの健康を左右する

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肥満もうつ病も、実は腸内細菌との”対話”に失敗した免疫機能の障害のせいかもしれない。腸は単に食べ物を消化するためだけの器官ではなく、わたしたちの生死に関わる多くの病気の源泉であり、われわれが直面する健康問題の鍵を握る存在かもしれないという。

米国オレゴン州立大学の研究チームによれば、免疫機能の異常である自己免疫疾患はもとより、精神疾患であるうつ病、代謝性疾患である単純肥満などでさえも、実は腸内に常在する細菌とわたしたちのからだの細胞との「クロストーク(相互対話)」の失敗に起因するという。未来の病院では、腸内細菌を検査して、最適なプレバイオティクス(からだに良い腸内細菌を育てる食品成分)やプロバイオティクス(からだに良いとされる微生物)が「処方」されるようになるだろうというのである。

「わたしたちのからだの免疫の仕組みについて知っていることを聞いたら、ほとんど人は白血球、リンパ腺、あるいはワクチンのことを思い浮かべるでしょう」と主任研究者のナタリア・シュリジェンコ博士は語っている。博士は、オレゴン州立大学生物科学科の准教授である。「それらは免疫機能のほんの一部に過ぎないことを知ったら、みんな驚くに違いありません。わたしたちの腸内には、からだのほかの部分を合わせたよりも多くの免疫細胞が存在するのです。」 1380090703

「ヒトの腸にはとてもたくさんの免疫機能があります」と博士は語る。「ほとんどの人は、食べた物を消化することだけが腸の機能だと思っているのであまり注意を払いません。でも実際には、腸内にはからだのほかの部分を合わせた数の150倍以上の細菌が住んでおり、これらの腸内細菌は、消化を助けるだけでなく、もっとはるかに重要な仕事を請け負っているのです。」

その重要な仕事が、「クロストーク」とよばれるものであると博士は説明している。「クロストーク」というのは、腸内細菌と腸やその他の内臓器官の細胞間で交わされる物質や情報の受け渡しのことである。最近の新しい考え方によれば、この「クロストーク」が円滑に進行しなくなることが病気の原因を作り出すのだという。

「健康な人の体内では、腸内細菌が、必要に応じて人の免疫系を刺激して、その解答を受け取るような相互対話が成立しています」と博士は語っている。「現代的な生活様式、食事、過剰な抗生物質の使用といったことがこれらの細菌の減少をもたらし、その結果「クロストーク」も減っていったというわけです。」

1380092511 ヒトゲノムプロジェクトに象徴されるように21世紀の分子遺伝学の飛躍的な発展が、歴史上はじめて腸内細菌による「クロストーク」の全体像とその免疫機能における重要性を研究することを可能にした。その結果は驚くべきものであり、セリアック病や炎症性腸疾患など幅広い病気との関連が明らかになった。肥満やうつ病、自閉症、アレルギー、ぜん息、がんなどとの関連も示唆されている。

また、博士らは腸内細菌の機能不全が、しばしば腸の吸収異常や下痢を引き起こすことを指摘している。この機能不全は、世界中で数千万人の子供たちに影響を与えており、単に健康的な食生活によって改善するものではないようだ。実際のところ、腸内細菌が高脂肪食のような健康的ではない食事に、すみやかに適応して消化を良くする結果、腸からの脂肪の吸収が促進され体重が増えてしまう。

慢性的な体内の炎症反応は、今日先進諸国の主要な死因に数えられている、心臓病、がん、糖尿病など多くの生活習慣病に関連していることが知られているが、これらの多くもはじめは腸内細菌の機能不全が原因で始まる可能性が高いという。

これらの生物学的なプロセスを理解することは、それらを適切に管理するための第一歩となる、と博士は語っている。健康的な腸内細菌の組成についての理解が深まることで、個人ごとの最適な腸内細菌をもたらすための個別化医療による腸内細菌バランスの回復も可能になるだろう。そのための新しいプレバイオティクスやプロバイオティクスなどの開発にもつながるだろうとのことである。

出典は『アレルギー・臨床免疫学雑誌』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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