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公開日:2023-09-22

紙製ストローはプラスチック製よりも環境に有害?

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「環境にやさしい」紙ストローにも難分解性で有害な可能性の高い化学物質が含まれているようだ、という研究結果が『食品添加物と汚染』誌に発表された。いつまでも環境に残存して、我々の身体にも有害である可能性の高い「永遠の化学物質」が、検査した紙ストロー20ブランド中18ブランドから検出されたという。

ベルギー・アントワープ大学の研究チームは、世界で二番目であり欧州では初となるこの分析研究において、「ポリおよびパーフルオロアルキル物質(PFAS)」が含まれていないか明らかにするために、さまざまな素材で作られた39種類の市販ストローを分析した。

その結果、PFASは、分析した大部分のストロー中に含まれており、最も多かったのは紙製と竹製のストローであることが明らかになった。

PFASは、アウトドア用の衣類からテフロン加工のフライパンにいたるまで、水、熱、汚れに強い日用品の製造に使われている。けれども、それはヒト、野生動物、そして環境に潜在的に有害である。

この化学物質は分解が極めて遅く、環境中に数千年にわたって残存する可能性があるといわれており、それゆえ「永遠の化学物質」として知られている。

PFASはまた多くの健康問題との関連も指摘されている。その中には、ワクチンの有効性を弱めることや、低出生体重児、甲状腺疾患、血清コレステロールの上昇、肝損傷、腎臓がん、精巣がんなどが含まれる。

「紙や竹などの植物性素材で作られたストローは、プラスチックに比べてよりサステナブルでエコフレンドリーだと宣伝されてきました」と主任研究者のティモ・グロフェン博士は語っている。「けれども、これらのストローにもPFASが含まれているということは、それがかならずしも真実ではないことを意味しています。」

英国やベルギーを含め、使い捨てのプラスチック製品の販売を禁止する国がますます増えている。それにはストローも含まれており、植物性素材で作られたストローが次第に一般的になってきている。

けれども、最近発表された先行研究において、米国で普及している植物性素材で作られたストローにPFASが含まれていることが明らかになった。そこで、グロフェン博士ら研究チームは、ベルギーでも同様ではないかと考えて検討を行ったという。

研究チームは、紙、竹、ガラス、ステンレス、プラスチックの5つの素材で作られた39ブランドのストローを、ベルギー国内の小売り、スーパー、ファストフード店から購入し、PFASの分析を2回行った。

その結果、39ブランド中27ブランド(69%)から18種類のPFASが検出された。

紙ストローがもっと検出率が高く、20ブランド中18ブランド(90%)からPFASが検出されたほか、竹ストローでは5ブランド中4ブランド(80%)、プラスチックストローは4ブランド中3ブランド(75%)、ガラスストローは5ブランド中2ブランド(40%)にいずれもPFASが含まれていた。

ステンレスのストローだけはPFASが検出されなかった。

最も多く見られたPFASはペルフルオロオクタン酸(PFOA)で、これは2020年から世界的に使用が禁止されている。

また、極めて小さなPFASである、トリフルオロ酢酸(TFA)とトリフルオロメタンスルホン酸(TFMS)、も検出された。これらは水溶性が高いため、ストローから飲み物に浸出する可能性がある。

全体としてPFASの含有量は少なく、多くの人がストローをたまにしか使わないことを考えれば、ヒトの健康に及ぼすリスクは限定的だといえる。けれども、忘れてならないのはPFASがヒトの体内に長年にわたって残留する可能性があり、歳をとるにつれて蓄積量が高まっていくだろうということである。

「微量のPFASそれ自体は有害ではありませんが、すでに私たちの体内に蓄積している分にそれが上乗せされる可能性があります」とグロフェン博士は語っている。

ストローに含まれるPFASが、防水加工のために製造過程で添加されたものなのか、単なる汚染の結果なのかは、現時点では不明である。汚染の結果なのだとすれば、汚染源としては、起源植物を育てた土壌あるいは製造工程で使われる水の可能性が高い。

けれども、ほぼすべての紙ストローにPFASが含まれる現状をみると、あるいは撥水コーティング剤に含まれていた可能性も高いのではないか、と研究者らは考察している。

本研究では、PFASがストローから液体中に溶け出すかどうかは調べていない。

グロフェン博士は、「紙と竹のストローにPFASが含まれていることは、それらが必ずしも生分解性ではないことを示しています」と結論付けている。

加えて、「ステンレスのストローからはPFASは検出されませんでした。したがって、消費者にはこのタイプのストローを使用するか、ストローの使用を完全に避けるようアドバイスします」とコメントしている。

出典は『食品添加物と汚染

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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