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公開日:2019-12-26

筋肉量が多いと年をとっても心血管疾患になりにくい?

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中年期に筋肉を維持することは心筋梗塞や脳卒中を防ぐ助けになるかもしれない、というスペイン・サントジョアンドデュ病院研究所の研究結果が『疫学と共同体保健雑誌』に発表された。

筋肉の量を維持することは、心血管系の健康を増進する上で効果的であり、年をとってから心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクを下げるようだと研究チームは結論付けている。少なくとも男性ではかなり確実であるという。

30代も半ばを過ぎるころから筋肉組織は年々減少し始める。平均すると十年で約3%ずつ減少していく。筋肉は体内のさまざまな代謝に活発に関与しているので、それが減少することは、結果的に障害や死亡のリスクを高める結果となる。

これまでの研究でも、筋肉量は心筋梗塞や脳卒中のリスクと関連していることは報告されていたが、それらの多くは、既に心血管疾患をもつ患者に焦点があてられていた。

今回研究チームは、心臓病ではない人々でも、中年期の筋肉量がその後の心血管疾患の発症に影響を及ぼしているかどうかを明らかにしようとした。

そのために、2,020名の心血管疾患の既往のない健康な参加者を対象に、実際に心血管疾患を起こすまで、十年にわたって追跡調査を行った。参加者の半数(1,019名)は参加時点で45歳を超えていた。

研究開始時に、地中海型食生活の順守度といった生活習慣や身体活動量などが調べられた。また血圧、BMI、血中の炎症バイオマーカーなど心血管疾患のリスク因子が測定された。筋肉量(骨格筋量)も計算された。

十年にわたる追跡調査中に45歳を超えていた1,019名のうちの272名が致死的および非致死的な心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中を含む)を発症した。

解析によって年齢や喫煙、飲酒など種々の関連因子の影響を除いた結果、男性は女性の約4倍、心血管疾患を発症し易いことが明らかになったが、さらに筋肉量もこれに関連していることがわかったという。

研究開始時に最も筋肉量が多かった上位3分の1の人々は、最も少なかった下位3分の1の人々に比べて、心筋梗塞または脳卒中を発症するリスクが81%少なかった。

心血管疾患のリスク因子である高血圧、糖尿病、肥満の割合も、筋肉量が最も多かったグループで少なかった。

筋肉量が最も多かったグループはまた、年齢が若く、男性で、喫煙する傾向が高いことも明らかになった。さらに、身体活動量も多く、収入や学歴も高めであり、地中海型食生活の順守度も高い傾向がみられた。

さらに詳細に解析を進め、食事、収入、学齢、糖尿病の既往歴などの影響を除いたところ、筋肉量と低い心血管疾患リスクの関係は男性だけにみられ、女性にはみられないことがわかったという。

もともと男性のほうが筋肉量が多い上に、ホルモンの関係で加齢による影響も女性よりは受けにくいことから、男女で違いが表れたのではないかと研究チームは考察している。

なお、本研究は観察的研究であり、堅牢な因果関係を結論付けることはできない。とはいうものの、この結果は、骨格筋の保持と心血管系疾患のリスクの関係を示唆したものとして重要だと研究チームは結論付けている。

そして、定期的な身体活動には筋量が落ちないようにレジスタンス運動を含め、食事ではたんぱく質をたくさん摂ることを推奨している。

出典は『疫学と共同体保健雑誌』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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