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公開日:2013-08-01

父の肥満で孫まで糖尿病に?

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もしあなたが太り気味の男性で、そろそろ子供がほしいと考えているならダイエットを始めるちょうど良い機会かもしれない。父親が肥満していると、娘や孫も太りがちになり、しかも糖尿病に罹りやすくなるようだ、という豪州アデレード大学の研究結果が発表された。

1375335711 子供が親に似るのは、すべて親の遺伝子によるものだというのが長い間、科学の常識だった。だから両親が食べ過ぎて肥満しても、それが肥満遺伝子によるものでない限り子供に遺伝することはないと思われていた。

ところが、遺伝の細かい仕組みがわかるにつれて、母親が単に高脂肪食の食べすぎで太っただけでも、その肥満が子孫に直接影響を与えるらしいことがわかってきた。さらに驚いたことには、父親の肥満さえもが、同様に子孫に影響するらしいことが最近の研究から明らかになってきたのである。

「今回の知見が人にもあてはまるとすれば、授精時の父親の食生活や体脂肪が子供を生涯にわたって苦しめ続けるということになります」と主任研究者のトッド・フルストン博士は述べている。「父親になる予定がある人は、子孫のよりよい健康を願うなら、なるべく健康な生活を送るが望ましいといえるでしょう。」

父親が子供に伝えられるものは遺伝子の本体であるDNAの他にほとんどない。今回、研究チームでは精子中のマイクロRNAに着目して詳細な解析を試みた。マイクロRNA(miRNA)というのは、DNA遺伝子からたんぱく質を作り出すRNAとは別物で、他の遺伝子の発現を調節する役割を担っていると考えられている極めて小さなRNAのことである。

実験では、父親である雄マウス(二十日鼠)20匹を2群に分け、一方には高脂肪食、他方には対照として普通食を10週間にわたって与えた。まず、父親世代が普通食で飼育された雌と交配し、最初に生まれた第一世代(子)をさらに普通食で飼育したマウスと交配させて第二世代(孫)とした。最初の父マウス以外はすべて普通食で飼育された。

その結果、高脂肪食で飼育された父マウスは、体脂肪が2割増加したが、糖尿病の兆候は認められなかった。ところが、子マウスの雌は肥満傾向があり、平均体重が有意に高かっただけでなく、糖尿病の兆候のひとつであるインスリン抵抗性も上昇した。

しかも、この傾向は孫世代にまで伝達されることが確認された。子世代の雌では肥満が67%増加したのに対し、彼女らの息子(孫世代)でも肥満が24%増加していたという。

研究チームは、父マウスの精子に含まれるマイクロRNAを比較したところ、高脂肪食によって400以上の変化が認められ、その変化が子孫に肥満と糖尿病を増加させる一因であることが確認された。同様に、遺伝子の発現に影響を与えることが知られているDNAのメチル化状態も大きく変化していた。

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つまり、高脂肪食を食べることで精子中のマイクロRNAとDNAのメチル化に変化が起こり、その結果、子孫は代謝症候群(メタボ)的な問題を抱え易くなるようだ。しかも子供だけでなく孫の代まで影響が続くことも示唆された。

「母親の肥満が子孫に時として重大な問題を遺すことはすでに良く知られた事実ですが」と掲載誌の編集長であるジェラルド・ワイズマンは語っている。「父親の肥満もさまざまな問題を子供たちに遺すことが明らかになったわけです。今回の結果を支持するための更なる研究が望まれますが、父親になる予定の男性諸君にはいますぐダイエットを検討してもらうのがいいでしょう。もちろん自分のためではなく、子供たち孫たちのためにです。」

出典は『米国実験生物学連合雑誌』

監修・執筆 和気奈津彦(わけ なつひこ、薬学博士)
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