公開日:2022-06-30
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中年以上の人々にとっては、1日7時間の睡眠が理想的であり、それ以上でも以下でも認知機能を維持し、精神を健康に保つことが難しくなるようだ、という英国ケンブリッジ大学と中国・復旦大学による研究結果が発表された。
睡眠は、認知機能と良好な精神状態の維持に極めて重要な役割を果たしている。睡眠にはまた、脳内から不要な老廃物を除去して脳を健康に保つ役割もある。我々が歳をとると、眠りに落ちたり安眠したりすることが次第に困難になって、睡眠の質や量が損なわれることがしばしばみられる。このような睡眠の障害は、高齢者における認知機能の低下や精神的な疾患の増加の一因となっている。
最近『ネイチャー加齢』誌に発表された本研究において、研究チームは、38-73歳の約50万人を対象とした英国バイオバンクのデータを用いて、睡眠パターンが認知機能や精神の健康状態に及ぼす影響について検討した。そのうち4万人については、脳内画像診断と遺伝子データも利用可能することができた。 |
データ解析の結果、研究チームは不十分な睡眠あるいは過剰な睡眠は、どちらもプロセス処理速度や視認力、記憶力、問題解決スキルといった認知パフォーマンスを損なうことを発見した。毎晩7時間の睡眠は、認知パフォーマンスの維持にとって最適であるというだけでなく、良好な精神状態の維持にとっても最適であることが明らかになった。睡眠時間がそれ以上または以下の場合、不安症やうつ病の症状が増え、全体的なウェルビーイングが損なわれることもわかった。
睡眠時間がそのような影響をもたらす理由のひとつとして、研究チームは、不十分な睡眠が徐波睡眠(深い眠り)の妨げになることを挙げている。このタイプの睡眠は、記憶統合と密接にリンクしており、アミロイドたんぱく質の組み立てにも関与している。アミロイドが間違って折りたたまれて蓄積するのは、ある種の認知症の特徴的な症状である。さらに、睡眠不足は脳が毒素を取り除く能力を弱める可能性がある。
研究チームはまた、睡眠時間と脳の認知機能や記憶機能を司る領域の構造に関連がみられることを発見した。それもまた、7時間以上または以下の睡眠で大きく変化していた。
毎晩7時間の睡眠をコンスタントに続け、大きな変動のないこともまた、良好な認知機能のためには重要なようである。先行研究では、睡眠パターンの乱れが炎症を増加させ、加齢関連疾患に対する脆弱性を増大させる可能性が指摘されている。 「私たちには、睡眠時間が長すぎたり短すぎたりすることが因果的に認知上の問題を起こすのかどうかはわかりませんが、この結果はその可能性を支持しているといえます。ただし、高齢者の睡眠の質には、遺伝的な問題や脳の構造といった種々の複雑な問題が絡んでいるのも事実です」と復旦大学のジャンフェン・フェン教授はコメントしている。 |
「高齢者の睡眠を改善する方法を見つけることは、特に精神障害や認知症の患者にとって、彼らが良好なメンタルヘルスとウェルビーイングを維持し、認知機能の低下を回避するのを助けるために重要である可能性があります」とケンブリッジ大学のバーバラ・サハキアン教授はコメントしている。
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