公開日:2021-12-27
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定期的に睡眠不足を補えば、慢性的な睡眠不足が歩き方に及ぼす不具合を解消できるようだ、という米国マサチューセッツ工科大学とブラジル・サンパウロ大学の研究が発表された。
毎日十分に眠るのは難しくても、週末に数時間でも長めに眠ることによって、疲労によるぎくしゃくした身体の動きを、少なくとも歩行に関しては減らすことが可能であるという。
数学の問題を解いたり、しゃれた会話を続けたり、この文章を読むことでさえ、睡眠不足に影響されることは、多くの研究結果を待つまでもない事実である。けれども睡眠が、歩き方のように高度な思考回路があまり必要なさそうな活動に影響するかどうかは、実はよくわかっていなかったという。 |
今回の研究は、我々が歩く時のその足取りのコントロールに睡眠不足が影響するかどうかを、大学生を対象に実験的に調べたものである。
研究チームは、学生の睡眠不足がトレッドミル(ルームランナー)上での足取りを乱すことを発見した。実験の前の晩に徹夜させられた学生は、歩行の制御がさらにおぼつかなくなったという。
今回研究に参加したサンパウロ大学の学生は、加速度計のついたスマートウォッチを与えられ、14日間にわたって行動を記録された。これで学生の毎日の睡眠時間や活動状況が明らかになった。学生には特に睡眠などに関する指導はせず、自然な睡眠パターンが記録されるようにした。学生の平均睡眠時間は6時間で、中には週末に、平日の睡眠不足を補うように、より長く睡眠する者もいた。
14日目の前の晩から、一部の学生は実験室で翌朝まで徹夜した(急性睡眠不足群)。そして最終14日目の朝には、全員が歩行試験を受けに実験室に集合した。
歩行試験で学生は、トレッドミル上をメトロノームに合わせて定速で歩行した。リズムに合わせて歩くように言われ、研究チームはその間、学生には黙ってメトロノームを遅くしたり微妙に変化させたりして、学生がそれに合わせられるかどうかを測定した。歩行の様子は動画に収められ、特に、メトロノームのリズムと学生の踵がトレッドミルに触れるタイミングなどが解析された。
「学生は、リズムに同期させてステップを踏む必要がありました。私たちは、急性睡眠不足群の学生では広範囲に誤動作が起きることを確認しました」と主任研究者のアルチュロ・フォルネル=コルデロ博士は述べている。「彼らはリズムをはずし、音を聞き洩らし、全体的にパフォーマンスが良くありませんでした。」 徹夜が歩行を乱すのはある程度予想されたことだったが、睡眠不足の代償として週末により多く睡眠した学生は、そうでない学生に比べてパフォーマンスが優れていたことだったことに、研究チームは驚かされたという。 |
「これはパラドキシカルな現象です」とフォルネル=コルデロ博士は述べている。「みんな疲労のピークに達しているのに、週末に長く睡眠した学生の歩行だけが良好だった。これは予期しなかったことです。」
「今回の結果から、歩行が自動化された神経のプロセスだけではなく、睡眠不足による脳機能の微妙な変化にも影響されるものであることがわかります」と共同研究者でMIT主任科学者のヘルマノ・クレブス博士はコメントしている。「睡眠不足を補うことが必要でしょう。毎日8時間眠るのが理想ではありますが、それが無理でもできるだけ代償睡眠をとるべきだと思います。」
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