公開日:2018-04-26
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植物ベースの食事でも、砂糖やコーンシロップなどの甘味料や精製穀物が大量に含まれていると、かえって冠動脈疾患のリスクを高めることになるようだ。
植物性食品中心の食事は、冠動脈疾患の発症リスクを下げることから世界中で推奨されているが、植物性食品の中には逆に冠動脈疾患のリスクを高める素材も含まれているという米国ハーバード大学の研究結果が、『米国心臓学会誌』に発表された。
これまでの植物ベースの食事の効果に関する研究にはいくつかの限界があった。というのも、先行研究においては、植物性食品をすべて同等に扱うのが一般的だったからだ。植物ベースの食事といえば、ベジタリアン食が典型的なもので、健康的なイメージが強いけれども、実際には植物性食品の中には、健康的な食品だけでなく、冠動脈疾患のリスクを高めるといわれている精製穀物や加糖飲料も含まれており、効果が相殺されている可能性もあったからである。 |
この限界を克服するために、研究チームは、植物ベースの食事を以下の3種類に分類した。(1)全ての植物性食品が多く動物性食品が少ない食事、(2)健康的な植物性食品(全粒穀物、果物、野菜)が多い食事、(3)あまり健康的でない植物性食品(精製穀物など)が多い食事。
今回研究チームは、米国の看護師健康研究の女性73,710人、看護師健康研究2の女性92,320人、そして健康専門職追跡研究の男性43,259人のデータを解析した。参加者は、2年ごとに20年以上にわたって、生活習慣、健康行動、医療記録を聞き取り調査された。研究開始時に冠動脈疾患、がん、脳卒中、冠動脈外科手術の既往のあった者は除外された。
追跡期間中に、8,631人が冠動脈疾患を発症した。全体として、植物ベースの食事の順守度の高い人は、冠動脈疾患の低い傾向がみられたが、特に、全粒穀物、果物、野菜などの健康的な植物性食品を多く摂っている人は、冠動脈疾患のリスクが実質的に低下することがわかった。けれども、あまり健康的ではない、糖分の多い飲料や精製穀物、ジャガイモ、スイーツなどの摂取は、逆にリスクを高めたという。
「私たちは、3つの食品カテゴリーと冠動脈疾患のリスクの関係を検証した結果、健康的な植物性食品はリスクを下げるけれども、あまり健康的でない植物性食品やすべての動物性食品はリスクを高めることを発見しました」と研究チームは語っている。「植物性食品の栄養的なクオリティ(質)は、食品によって明らかに大きな違いが存在するので、植物ベースの食事においては食品ごとのクオリティを良く考えることが必要です。」 関連記事の中で、ラッシュ大学のキム・アラン・ウィリアムス教授は、本研究が植物ベースの食事に冠動脈疾患のリスクを下げる働きがあることの確固たるエビデンスを加えるものだと述べている。「全ての植物性食品が同じように健康的なのではなく、全粒穀物、不飽和脂肪酸、果物、野菜が豊富に含まれる植物ベースの食事がより望ましいでしょう。」 |
ウィリアムス教授はさらに次のように述べている。「本研究は長期にわたる追跡調査によって、長い間に動物ベースの食事から植物ベースの食事に変化していった場合の効果を検証することが可能でした。運動は続けることが重要だといいますが、同じように食事もわずかな変化が長い間に大きな変化を生み出していくのでしょう。」
本研究の限界として、観察的な研究であることや食事調査が参加者本人の自己申告であることなどが挙げられる。けれども、異なる複数の週の調査と血中指標の測定によって妥当性を検証しているとのことである。
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