公開日:2015-05-15
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心肺フィットネスレベルの高い男性は、加齢に伴う血清コレステロール値の上昇を約15年分遅らせることができるようだ、という米国サウスカロライナ大学の研究結果が『米国心臓学会誌』に発表された。
心肺フィットネスとは、運動中の筋肉への酸素供給能力および筋肉の酸素消費能力が合わさったもので、心肺持久力とも言う。運動や身体活動によって高めることが可能であり、それによって心臓病、脳卒中などのリスクが低下することが知られている。
血清コレステロール値は、一般に年齢と共に高くなり、高齢者では逆に低下する。これまでの研究で、コレステロール値が一定値を超えていると慢性心疾患のリスクが高まることが知られている。また、身体活動によってコレステロール値を改善できることも報告されている。 |
「加齢に伴うコレステロール値の上昇は好ましいものではありません」と主任研究者のズーメイ・スイ助教授は語っている。「私たちの研究は、健康な男性において、加齢に伴うコレステロールなど血中脂質の変化に、心肺フィットネスレベルがどのように関係するかを明らかにしています。」
研究チームは、疫学調査であるエアロビクスセンター縦断研究の男性参加者11,418名の1970年から2006年までの臨床検査データを解析した。心肺フィットネスレベルはトレッドミルを用いて測定し、年齢に応じて、低中高の3段階のフィットネスレベルに分類された。血清コレステロール値や中性脂肪値は絶食後に採血して測定した。
データ解析の結果、研究チームは総コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪の全ての値が、ある年齢までは加齢とともに上昇するが、40代後半から50代前半をピークとして低下していくことを発見した。また、善玉コレステロールと呼ばれるHDL-コレステロールの場合は逆に中年までは低下しその後上昇することを確認したという。
この血中脂質の年齢による増減のスピードには心肺フィットネスレベルによる違いが見られた。心肺フィットネスレベルが低い男性は、30代前半で高コレステロール血症と診断されるリスクが高いが、心肺フィットネスレベルが高い男性は、40代半ばまで低い傾向が維持されることがわかった。加えて、フィットネスレベルが低い男性は、20代前半でHDL-コレステロール値が水準以下に低下し、30代半ばで非HDL-コレステロール値(HDL以外の全てのコレステロール、いわゆる悪玉コレステロール)が水準以上の高いレベルに到達する傾向が見られたという。フィットネスレベルの高い男性では、どちらも生涯を通じて安定して正常域に留まる傾向が見られた。
以上の結果から、心肺フィットネスレベルの低い男性は、フィットネスレベルの高い男性に比べて、平均して約15年早く脂質異常が観察されるようだ、と研究チームは結論づけている。 |
「今回の研究結果は、心肺フィットネスレベルを改善すれば、脂質異常症の発症遅らせることが可能であることを示唆しています」と筆頭研究者のヨンムーン・マーク・パーク医師は語っている。「このような健康的な生活習慣の促進はまた、動脈硬化や心血管疾患のリスクを下げる助けにもなるでしょう。」
同誌の関連エディトリアルにおいて、編集長でマウントサイナイ医科大学教授のパオロ・ボフェッタ医師は、心肺フィットネスレベルを向上させることの重要性を強調して次のように語っている。
「米国人における総運動量の低下傾向は、特に若者の間で悪化し続けています。今回のような結果を、臨床や予防医学の実践にもっと直接的に反映させていく努力が今や重要なのではないでしょうか。一般国民に対しては運動の重要性を教える普及啓発活動を、そして医療関係者に対しては、患者が身体活動カウンセリングを受け易くするためのサポートが必要とされているのです。」
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